ヤクザと家族 The Family (2021)

文字数 840文字

【ダークな重層に眼を覚ます】2021/2/2




本シネマが本年(2021年)初鑑賞となった、
なんとなんともう2月2日である!
無論新型コロナパンデミックの影響であり、僕は紛うことなき高齢者だからずっと我慢のSTAY HOMEだった。
と同時に、僕の見たいシネマがまるで嫌々するかのように隠れてしまった、
公開延期の連続だった。
そんななか、待ちに待った鑑賞に堪えるであろう本編が本作、
藤井フィルムだった。

そんな期待と重責を担った本作は、暗い、哀しい、未来のない無光を具現していた。
自粛・自粛の窮屈な世の中に生きる顧客にとって、その意味からすればまったくもって不適切なシネマに違いなかった、ストレス解消からは程遠いテイストに満ち溢れていた。

突き放したような素っ気ないタイトル「ヤクザと家族」からその趣を察することは容易だった、何を今更「ヤクザ世界」かよ・・・という予断はあった。
物語りはまさにその通りに進んでいく、正統派(?)のヤクザ一家の親分(舘さんナイス)に眼をかけられた少年(綾野剛さん熱演)の哀しい一生だった、それだけの話だった。
お決まりの仁義など露ほども気にしない敵(かたき)ヤクザとの不毛の抗争、汚職刑事に真正面から挑んでいく主人公が哀れ。

タイトルの「家族」は実は主人公の見果てぬ夢だった。
主人公にかかわる人間にも家族の匂いを発するものは一人もいない、
模擬家族のつかの間の幸せがさらなる不幸につながるという負の連鎖、
ここまで徹底的に顧客を突き落としてくれる、
さすが藤井フィルムの重層に僕は参ってしまった。

シネマは、ヤクザの基本的人権を擁護することなく、暴対法を批判することなく、と言って一般人の非情を責めることなく、
その裏に潜んでいる巨悪をさりげなく示して見せる。

お上やマスメディアの言葉を鵜吞みにしてはいけない、またしても僕はそんな些細ではあるが大切な真実を思い起こされる。
世情がささくれ立っている緊急事態宣言状態の日本、
しっかりと自分の考えを持たないとね。
藤井フィルム健在なり。
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