天才スピヴェット (2013) 

文字数 768文字

【科学技術への大いなるアイロニー】 2014/11/25



ジュネのシネマは「ロング・エンゲージメント」以来だから10年ぶりかな、
相変わらずアイロニー満載の辛辣物語だった。
そう、
お子様向け、科学教育推進、心温まる家族愛…などと勘違いすると行き場を見失いかねない。

確かに天才少年のスピヴェットはいた。
しかし彼は「科学」は日々の生活に役立てるものと理解している。
彼が受賞する権威ある賞(ノーベル賞へのステップのような賞)についても
『既存の理論の組み合わせであり、発明ではない』とか、
『400年は人間にとっては永遠に近いが自然界においては一瞬にしか過ぎない』
と極めて冷静に真実をコメントする。
それを、【天才少年現れる、不幸な家庭環境からの大発明】…などと持ち上げ大人たちがいる。

そう、これはつい最近日本でも見かけた光景だった。

シネマでは、科学を食い物にする輩、節操のないマスコミに一矢を報いるのが、
なにあろうバラバラだと少年が嘆いていた家族だった。
100年遅れて生まれたカウボーイのパパ、
昆虫採集をすべてに優先する博士ママ、
ミスコンにしか興味のない凡庸な姉、
そして不幸な事故で死んでしまった双子の弟(ときどき亡霊で出現する)。
この家族構成は
「自然」、
「科学技術」、
「世俗」そして
「スピリット」をメタファーしているのだろう。
10歳の天才スピヴェットが、最後に家族の平和に戻れてよかった。

しかし、現実は前述したように、
「科学」「自然」両方を貶めるような世の中を僕らは許している。
マスコミが流す愚行を喜んで観るのは僕等だし、日本人ノーベル賞受賞に狂喜するのも僕等だ。
科学技術の発展が本当に人間を含めた自然にとって誠に貢献しているのか?

大いなる科学の疑問を、ジュネはモンタナの美しい山、水、空のもと僕に突き付けた。
そして家族が理解し合えることの困難さも。

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