エゴイスト (2022)

文字数 860文字

【まだまだLGBT差別は無くならな】 2023/2/13


決して豪奢なシネマではないし、だからと言ってミニマムでもないが、こと俳優陣に関してはゴージャスな布陣だった。
「僕のこと好き?」
「大嫌い!」
 絶句・・・
「嘘だよ、大好きさ」
これだけの会話の中にLGBTのGの愛の行方が盛り込められている、むろん台詞(脚本)の妙はあるがG二人を演じた鈴木さん宮沢さんの献身が際立っていた、特にお二人のSEXシーンは文字通りの献身、彼らを導いた松永大司監督の(してやったり)が見えた。

「ブローバックマウンテン(2005)」から遅れること17年、ようやく日本に格調高いG恋愛シネマが誕生したとはいえ、首相官邸に巣くう方々のお寒いコメントを思い出すまでもなく本作内では彼らの居心地の悪さが丁寧に切り取られていた、まだまだLLGBT差別は無くならない。

「お洋服は鎧だ」と宣言する主人公の雑誌編集長、彼のクローゼットにあるハイファッションコレクションが眩しい。
編集長が眉毛を描き直しブランドに袖を通しG仲間と集う、最新ファッションで撮影を仕切る、ダブルフーディでプライベートトレーニング に向かう、田舎の同級生を見返すために高価なファッションで決める、同じ装いで登場する主人公の姿を一度も見なかった。
しかし、恋人の母親に会うときはGの匂いをかき消すかのようにありきたりのスーツに身を包む、まだまだLGBT差別は無くならない。

物語後半からもう一つの才能が登場する、若き恋人の母親を演じた阿川佐和子さん。
Gを隠し通そうとする二人に諭す・・・「そんなに ゴメンナサイって言わなくてもいいのよ 大事な人なんでしょ」
14歳の時失った母親への複雑な想いを、恋人の母親に託す主人公、ありきたりのスーツは二度と出現しなかった。

いつも鎧を着て世間と対峙しなければいけない主人公だけど、差別されることの無いように常に周りに気を配る、敏感すぎるともいえる。
何の代償としてこんなエゴイストになったのか?
まだまだ LGBT差別は無くならない。
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