妻への家路 (2014) 

文字数 517文字

【「初恋」から「家路」にいたる愛の深まり】 2015/3/6



「初恋のきた道(1999年)」が愛の躍動の讃歌だったとしたら、
「妻への家路」は愛の終着を得心する鎮魂歌だった。
チャン・イーモウ監督が今作で描いた家族は、
文化大革命の嵐の中で翻弄されたちっぽけな歴史の断片であるが、
大切な夫婦のきずなを切々と描いている。

農村に追放された大学教授の夫を20年間待ち続ける妻をコン・リーが魂で演じ、
僕を魅了してくれる。
逃走した夫と、父を知らないまま文革の教えに洗脳された娘の板挟みになる妻の苦悩は、
実は単純なものではなかった。
そこには人間の欲望が巣食い、醜さが渦巻いていた。
耐えられず精神を崩壊させてしまった妻に、ようやく再会した夫の困惑。

全編幸せの温もりのひと欠片さえない物語が続く。
老いながらも夫の帰りを待つ妻に寄り添う夫、こんな哀しい夫婦があるものなのか?
「君に読む物語」にみたような絶望のなかの希望すらない。
毎月5日 駅にたたずみ、希望を待ち望む二人の姿は僕には忘れられないシーンになりそうだ。
「愛」は寄り添うことなのか。

繰り返し、文化大革命をシネマで取り扱うイーモウ監督。
一党独裁の頸木に静に抵抗する監督の信念を今回も感じることができた。

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