麦の穂をゆらす風 (2006)

文字数 633文字

【僕らの大義とは?】 2007/5/8



1920年のアイルランド独立闘争に散ったかけがえのない多数の命を描く本シネマから、
ふと「大義」という言葉を想いだしてしまった。
そういえば、「大義」なんてもの、現代社会の表舞台からいつの間にか消えてしまった。
僕は自由、平等、平和を求めて戦う人に必要なのが「大義」だと思っている。
本シネマでは、「大義」とは何かを考える印象深いキーワードが散見される;

●誰と戦うのではなく、何のために戦うのか。
●目先の利益で妥協することなく、遠い将来の子孫の幸福を考える。
●経済面の隷属は本当の自由を意味しない。
シネマでは当初、英国軍の残虐を暴く一方で、
アイルランド共和国軍の悲壮なる戦いが胸を打つ。
主人公デミアンをして「一線を越えてしまった」と呟かせたのは、
裏切り者とはいえ幼なじみを処刑しなければならない「大義」が彼を覆いつくしたからだろう。

不幸にも、おなじアイルランド人同士が反目する局面に至って、
彼の「大義」はより研ぎ澄まされる。 
美しい緑の山河、麦の穂が輝く畑を背景に、真剣に祖国を論じ、
戦う若者たちが尊く美しく見えた。

これをアイルランドの血塗られた歴史のひとこまと受け止めるだけで
終わることのないようにしたい。
ともすれば、お国のために命を捧げることが「大義」と称せられた時代から一転して、
次の世代に何を残せるのだろうか?・・・
という質問にさえ自信を持って答えられない日本人。

僕らの「大義」とは?
こんな思いをさせてくれたシネマに感謝したい。

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