転々 (2007)

文字数 771文字

【コメディ・ジャパネスク】 2008/6/5



東京には思いがけず懐かしくも居心地良く感じる街並みが結構残っている。
谷根千(谷中、根津、千駄木)ブランドなる散歩地区が名を馳せて久しいのも事実。
本シネマは散歩視点に写る「東京風景」と、
それとミスマッチすること甚だしい「斜笑」の予想外コラボレーションのせいで、
逸級のジャパネスク・コメディに化けていた。

ずっと昔からある和菓子をようやくいただいたように、心が温かくなったり、
可笑しゅうて、やがて哀しい無常を悟る・・・なんて言葉が思い出された。

三浦さんとオダギリさん演じる異様コンビが織り成す、
一見有り得ないような珍散歩を支え、
最後まで緊張感を維持させているのは、
二人の数々のゲリラエピソードのほかに、
主人公二人とは丁度鏡の反対側で機能する、
スーパー店員3人のこれまた奇妙な道中だった。

この二組の細切れの爆笑コントを笑い飛ばすだけで、
僕はとってもハッピーになれた。
常々、心にユーモアアーマー装着を心がけているからだろうか、
仕掛けられた巧妙な手練の皮肉落とし穴に、諸手をあげ無条件で飛び込むことができた。
こんなに心から笑ったのは久しぶりだった。

一番の共感は、笑いの先に余計な講釈が用意されていないこと。
こんなに複雑な毎日、笑いの中にまで予断を待ったり、頭をひねることもないだろう。
人にはもっと考えることがたくさんあるはずだから。

周りに、笑いの達人脇役を配したとはいえ、
三浦、オダギリ両雄の役作りに、いまさら驚く、
彼らが画面から迫る、息遣いさえ感じられる。
二枚目機能だけの俳優だけではないことは知っていたが、
特に三浦さんの演技は僕の予想を大きく上回っていた、記憶すべきものだ。

老婆心:
二人の演技に気を取られて、東京の美しい街並みを見過ごさないように。
いくつ心に残る風景があったか数えられる余裕も大事にしたい。

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