ヴィレッジ (2023)

文字数 794文字

【廃棄場に鬱積する想いが伝わらない】 2023/4/21


「新聞記者(2019)」が印象深かった藤井道人監督。
もっとも良くも悪くもという 印象深さではあった、大衆向けセンセーショナルな素材を敢えて取り扱うという得点を挙げながら、掘り下げ方が腰砕けに終わるという期待裏切り感の混濁のなか、最後はやさしすぎる観客の寛容に頼り、一方で告発されるべき真の悪にはガス抜き清涼飲料としての効用にニンマリとするという構図だろう。

今作で過疎の村(VILLAGE)にそびえたつ廃棄処理場の煙突、黒い煙が 象徴するものはいったい何だったのだろうか?
一昔前のような悪質な産廃業者、そのおかげで村が維持される・・・とくれば僕は原発問題をすぐに思いつく。 だがそんな大それたメタファーでも構成でもなかった、そこには村八分、パワハラ、環境汚染、不法投棄などなど小悪が陳列されていく。
産廃業者社長の厚顔無恥を政治リーダーに投影させているとすれば、スケールの小ささに唖然とする、そうではないのだろう。

本シネマの底には、廃棄場の底に埋め込められてしまったゴミと同じように鬱積した閉塞感が沈殿していた、ただしその鬱積が 観る僕には何も訴えてこない。
人を殺めることでしか現状打破できない鬱積、言い換えれば暴力でしか表現できない現状を切り取っていたわけでもない、目指していたかもしれないが。

毎回演技の幅を広げ続けている横浜流星さんの熱演だったが、周りの芸達者が彼に反応していなかったのが不思議だった。 流星さん、古田さん、獅童さんの髪型が一様に長くて不似合いだったと思っていたら、「お前の髪型は変だ、前のほうがよかった」という台詞が飛び出して笑ってしまう、シネマで反応した唯一のシーンだった、それほどに俳優たちの相乗効果が乏しかった。

救いようのない物語、それはそれで刺激になるが、本シネマにはその覚悟と説得力がなかった。
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