銃 (2018) 

文字数 681文字

【1%の手入れ】 2018/11/22



暗い じめじめした物語をどう脚本にして、どのように演出するのかだろうか?
純粋理性的なそして狂気に傾いている独白を、どうやって映像化するのだろうか?
武監督の手腕にに少なからぬ興味があった。

なるほど、モノクロ画面で始まった、
これは時間的ギャップではなく精神的ギャップをメタファーしているのだろう。
主人公トオルを演じる村上(虹郎)さんが幼くてたどたどしい、
演技不足と間違えるところだった。
シネマは、ほぼ99%原作通り、内容も流れも登場人物のセリフも変わらない。
小説をそのまま映像に移し替えている・・・・つまらないなと思った。

モノクロ映像のハレーションが美しい、
撮影アングルが計算しつくされていることに気づいた。
ここまで中村文則ワールドを再現すること自体の価値を納得し始めた。
でも、映像で主人公の心の呟き、悪態、欺瞞を伝えるのには限界があった。
残念なことに村上さんのモノローグが素っ気ない、
僕のほうに届いてこない…と思った。

しかしながら、すべては最後にひっくり返される。
小説通りの99%、残り1%を監督はわかりやすい解釈にしてくれた。
主人公の心の奥に潜んでいた闇を陽のもとにさらす。

女性とのぎこちない付き合い、
虐待少年への思いやり、
いなくてもいい女、
その根っこが最後に見える。

ラストシーンはまた小説の通りに戻る、
だがもう今までのタッチとは違うシネマに変質していた、
やられた。

老婆心:
原作通りに進展する中、シネマ解決テクニックがない分 演技者の才能が際立ってくる。
リリー・フランキーさんのしゃべり、村上(淳)さんの悪態が光っていた。


 
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