八甲田山 (1977)

文字数 890文字

【蒸し暑い日本の夏、この時期恒例】 2007/7/19



蒸し暑い日本の夏、この時期恒例のように鑑賞するのが「八甲田山」。
観てるだけで心底冷えてくる。
まさに「心底」なのは「八甲田山演習」の目的を知れば知るほどである。
来たるべしロシアとの戦争、想定すべし寒冷下での戦のシュミレーションがその目的。
軍隊とは、そういう組織である。

極端な表現かもしれないが、
何人犠牲にして何人以上の命を奪うかが「国の戦争」である。
民族消滅は国家の敗北であり、戦争の負けであるからして。
そして、戦争で死んでいくのは若者たちから。
その戦争の前に、戦争の準備に命を捧げる。
戦争本番の前に死ぬことは悲しい、理不尽だ。
でも、それが軍隊というものだ。

公開時、僕はストイックな指揮官、徳島大尉(健さん)に魅了された。
神田大尉(北大路欣也)の悲劇に歯がゆい思いをした。
リーダーシップの在り方について、学んだような気持ちになっていた。
三十年前の話だ。

今、とてもそんな気持ちになれない。
吹雪の中、隊列から湧き上がる行進歌、「雪の進軍」。
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雪の進軍氷を踏んで
どれが河やら道さえ知れず
馬は斃(たお)れる捨ててもおけず
ここは何処(いずく)ぞ皆敵の国
ままよ大胆一服やれば
頼み少なや煙草が二本 ( 作詞・作曲:永井建子 )
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この歌詞が、隊長の命令のもとレフレインされる。
♪ゆき~いのしんぐん・・・
♪ユキ~イノシングン
♪こーおりをふんで~・・・
♪コーオリヲフンデ~
誰が歌っても、考えてもこれは厭戦歌だ、
実際 太平洋戦争中は歌唱禁止となったと聞く。
明治の軍隊においても、誰も喜んで戦争になんか行きたくなかった。
本来日本人は厭戦家だった。

たまに雪が降ったとき、
苦労しながら歩くとき、
この歌がふと口をついて、悲しくなる。
だから、冬には「八甲田山」を観ない。
夏の暑い日、
心と身体をクールにするために観ることにしている。
自分で守るしかない「平和」だから。
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