スパイの妻<劇場版> (2020)

文字数 892文字

【エコ(節約)シネマでした】2020/10/21



くせの強い黒沢清フィルムが今回はどんなにヒネリを加えてくれたのか?
期待して拝見した。

タイトルに「劇場版」とあるのはもともとNHKのTVドラマとして作られたものだから。
そのドラマ版は拝見していないが劇場用に映像に手を加えた・・・との宣伝がある。
キャスティングが豪華だと、同じ宣伝コピーにあるが、蒼井優さん、高橋一生さん、に加えての東出昌大さんを「豪華」というかどうかは、その演技結果にかかわるものだ。

主役級のこのご三人の関係が分かりづらいという致命的な欠陥があった、
これはキャスティン以前の大きな問題だった。
蒼井さんはどうやら良き御家柄ご出身らしい、
高橋さんは底辺から成りあがったやりて実業家らしい、
東出さんは蒼井さんお幼馴染で御家柄もよろしそうなのに今は嫌われ者の憲兵になっているらしい。
ここまでは顧客にも推察できる範囲だが、
三人の愛憎の位置関係や心の葛藤においては顧客満足度は低かった。
敢えてくどい説明を省いた節約精神こそはTVドラマの原点とでもいうのだろうか?

セット、小道具、衣装、メイクにも余計な時間と経費を使わなかったように思える、
それを補うかのような太平洋戦争前を紐づける「文字情報」が多用されていたのは
シネマの本分ではなかったと危惧する。
これらはあからさまな資金不足、または費用節約であった。

物語の流れ(脚本)においても節約精神が発揮されていて
顧客はたびたび置いてきぼりにされてしまう。
貿易会社の実務も、憲兵の役目も、大邸宅の奥様の日常も説明不足のまま、
満州国に話が飛び、国家機密の隠蔽が突如出現する、
これらはいかにも拙劣に見えてしまったのも映像表現の余裕(予算)が
なかったからとしか思えなかった。

俳優さんの名誉のために付け加えると、蒼井さんは相変わらずの熱演、
高橋さんも自己傲慢をうまく見せていた。
東出さんは(僕の)期待が大きかったのに演技の枠が小さく苦労していた、憲兵のユニフォームは大きかったんだけどね。

最後に、
「劇場版」というメリットはいったい何だったのだろうか?
シネマらしい映像はどこにもなかったようだけど・・・。
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