ブロークバック・マウンテン (2005) 

文字数 654文字

【純愛の気高さと日陰の愛】 2007/7/1



本シネマは同性愛のテーマを真正面から取り上げながらも、
タイトルにある美しい自然の領域 ブロークバックマウンテンにそれを霧散昇華させている。

ホモセクシャルという言い方はいかにも臨床的過ぎる
・・・とボストンの私立探偵スペンサーの恋人が指摘しているが、
確かに、このふたりジャックとイアンの生き方を通俗的略語のホモといっても、
理解できないばかりか、ただのきれいごとになってしまうのだろう。

それじゃあ、非臨床的とは何か? ゲイ、オカマ・・・?
ことは複雑である。
ふたりは通常の結婚をし、子供も作る、
一緒に住もうと夢見ながら年を重ね自らを毀していく。
そこに立ちはだかったのは偏見と暴力。

一見暴力とは関係の無いお話だが、偏見による暴力の恐怖がシネマの底流にうごめいていた。
「ばれたら殺される」、「誰かに知られている」とイアンは怯え、悪夢に悩む。
通常は問題解決にはまず問題を明らかにすることだと実践してきた僕だが、
同性愛にはその基本的問題特定「誰が?」がつきまとう困難であることは十分理解できる。

僕には、いくら想像しても到底実感し解決できない彼らの愛情を,
本シネマは彼らの愛の軌跡を真摯に辿ることで問題提起している。
この方法は正しかったと思う、すくなくともふたりを含めたワイオミングの、
恐らくはアメリカ一般人の保守性をあらためて知ることが出来たわけだから。

イアンの決意「お前とずっと一緒だ」の言葉は、
純愛の気高さと同時に、
ロッカーの裏に隠される日陰の愛を感じ、とっても悲しかった。


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