HOKUSAI (2020)

文字数 730文字

【なるほど・ざ・北斎】2021/5/28



柳楽優弥さん、田中泯さんが北斎の青年期と老年期を演じ分けている。
物語そのものはいたってシンプル、絵が有する魔力の真髄に目覚める青年期、
栄華、金品を求めることなく世の中の不条理にたてつく老年期、
わかりやすい。

しかし、ここで僕は北斎のことをほとんど知らないことに気づいてしまう。
知っていることと言えば 「富岳三十六景」くらいだけだということに。
その富岳三十六景がフランスの印象派に大きな影響を与えたことを、世界史の受験勉強で知っていたくらいだ。
シネマを観終わってから、北斎のことを調べてみる、こんな向学心を呼び起こすのもシネマならではの功績なのかもしれない。

志の低かった北斎が風景画に到達するまでの青年期を柳楽さんが、
その後 肉筆画、挿絵画など広いジャンルでの画家に変幻していく老齢期を田中さんが演じていることを確認した、シネマ鑑賞にもある程度の常識は必要なことを痛感する。
例の「富岳三十六景」は北斎70歳過ぎのころ手指のマヒ(脳出血のようなものか)を克服ししながらの旅の途中に着想を得るシーンがある、
シネマの見せ場だったが、その時代の古希を過ぎた老人としては異様な活力だったことがわかる(田中さんの立ち振る舞いに魅了される)。
以上 「なるほど・ざ・北斎」である。

本シネマでは一貫して北斎の反体制思想をたたえる、好きなことが自由にできる世の中にしたい・・・と。
その象徴でもある武士でありながら戯作作家の不遇な死、それをきっかけに江戸を逃れ信州に隠れる、そこで描く「怒涛図」は、シネマのもう一つの見せ場になっている、若き日の北斎と米寿の北斎二人が並んで絵を描く幻想シーンだった。
僕のご贔屓役者 お二人協業の晴れ舞台でもあった。
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