イン・ザ・ハイツ (2020) 

文字数 839文字

【アメリカが直面する分断の苦悩】2021/8/4



この数日「ウエェスト・サイド・ストーリ」のリメイクが強力に番宣されている。
スピルバーグ監督の想いなどが紹介され、分断したアメリカを統合する象徴としての本年度の話題シネマになるだろうとのコメントがあった。
いやいや、この古臭い戀愛ストーリーをどうやって現状の混沌にメタファーするものか?
いやいや、時流を嗅ぎ取る天才スピルバーグ監督だけに、何かを企んでるに違いない?
などと、昨夜考えながら本シネマを拝見した。
舞台ミュージカルに関して無知の僕だが、敢えて今回も事前情報を遮断してスクリーンに向かった。

今なお人種間の争いが絶えることなく、近頃はアジア系市民への差別犯罪が増加しているニュースに心を痛めていたもののその真実は僕には不明。
本作ではカリビアン・中米諸国からの移民(夢見る人と称している)達が集中しているワシントン・ハイツという閉ざされた世界の中でアメリカが抱える人種をキーとした経済格差とそこに生じる分断を解き明かしてくれる、それもラップとヒップホップという新しいミュージカルコンビネーションで。
監督のこだわりが見えたのは、本シネマは偏に差別され富の享受から遠ざけられた移民の目から一方的にアメリカを眺めているところだ。
人種間の争いという単純な図式は微塵も見ることはなかった、ある意味それはそれで哀しいことではあったが。
アメリカがもはやすべての移民に開かれた成功の希望の土地でないことは、トランプのメキシコ国境壁を思い出すまでもなく明らかになった。
それでも、本シネマのようにアメリカで生きる移民たち、僕には到底知り得ることのできないアメリカの魅力があるに違いない。本シネマのテーマになっていた。

いくぶん甘ったるいほどのオーソドックスなミュージカル構成とラテン系俳優が溢れるキャスティンが告発するアメリカが直面する分断の苦悩。
進歩すること、それも素早く、そんな現代の生き残り方法が具体化されたファンタスティックなミュージカルだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み