沈黙 -サイレンス- (2017)

文字数 708文字

【正調スコセッシ節でした】 2017/1/21



難解に走りはしないだろうか?
冗長に(その結果)感じたりはしないだろうか?
果たして多数の日本人俳優とのコミュニケーションは取れたのだろうか?
大きなお世話的心配事をいっぱい抱えて拝見させていただいた。

ハリウッドの製作スタッフ、日本の俳優たち、
そして台湾の現場スタッフの努力が伝わってくるような
渾身の良作シネマだった。

人の心の暗黒部分を描く方がどちらかというとお得意なのかという
先入観を持っていた監督だったが、今作では「善」に徹底していた。
日本統一のために鎖国を断行し、
キリスト教を禁止した徳川幕府の本音が丁寧に説明される、
お上に悪意はなかったのだと。

九州の隠れキリシタンの一途さは本作全編にわたってこれまた丁寧に描かれる、
絶対神との出会いの衝撃がそこに読み取れる。
イエズス会が軍隊であることが本作冒頭で述べられている、
宣教師はすべからく特殊能力を有した戦士たちだった。

物語はそのキリスト教戦士たちの降伏、脱走、逃亡の真実を克明に追いかける。
長崎奉行はじめ役人たちが「体裁」を取り繕うことに執着し、
宣教師たちはあくまでもイエズズ会の侵攻を最終ミッションとする。

これは宗教感の違いをはるかに超えた戦いだった。
転びバテレンとなった元宣教師の繰り言として
「日本にはキリスト教が育つ土壌がない、そこにあるのは沼だけだ」
・・・現代も日本の信者数は少ない。

身近な神々に自己を都合よく合わせていく日本人が多数を占める中、
長崎地区でこれほどの宗教心が高まり、今に至る事実を忘れてはいけない。

そこには神の沈黙を恐れることなく信じることを生涯貫いた、
イエズズ会戦士の死を賭した戦いの歴史があった。

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