ボーンズ アンド オール (2022)

文字数 722文字

【悪辣なメタファーに揺らぐ多様性】 2023/2/20


ルカ・グァダニーノ監督+ティモシー・シャラメのゴールデンコンビ、「君の名前で僕を呼んで(2017)」の再来、少しばかりテーマが重たそうだがへっちゃらさ・・・と思っていた。

人肉食(カニバリズム)というと学術的な響きがあるが、シネマでは単にイーター(EATER 食べる奴)と言っているように人肉を食べたい欲望を抑えることができない種族として社会に適応できない主人公二人の逃亡物語になっている。
LGBTQ差別をなくそう、人間の多様性を大切にしよう・・・という枠をあっさり超えた設定に僕は取りつく島すらなかった。

生まれた瞬間から人食いの恍惚にとらわれた彼ら、密やかに自分を隠し通しながらも衝動に駆られてミスを犯す。 本作でも少女の母に逢うためアメリカ各州を渡り歩く中で、隠れて生きているイーターに遭遇し自分たちの未来のない人生を嘆く。
「食い続けるか、自殺するか、病院に閉じ込められるか・・・しかない」・・・絶望のつぶやきを他人事のように聞くことはできなかった。

働いても働いても現状をよくできない、まして将来のことなどわかるわけもない、そんな世の中で子供を育てたくない。
本作のメタファーは悪辣なほど受け取る側の倫理観を揺さぶる:
「LGBTQと人食いの違いは何か?」
「多様性の限界は何処か?」
「時代推移によって、LGBTQと同様に価値観変化が起きるのか?」

少し年月をさかのぼれば、LBGTQが人食いと同じ扱いを受けていたことを思い出す、
いやいや現時点でもさほど変わっていないのかもしれない。
差別はよくない、多様性よこんにちは・・・白々しくお題目を唱えているだけでは何事も変わらない。
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