砂と霧の家 (2003)

文字数 731文字

【共感する恐怖、一級のサスペンス】 2008/2/6



事件の後、人はいろいろと勝手なことを言うものだ。
渦中の被害者、加害者、関係者にはたいした落ち度もないのに・・。
そんな日常から生じる悲劇、そのサスペンスに感服した。
タイトルにあるとおり、「ハウス」を巡る争いに関わる普通の庶民の悲劇、
決して他人事とは思えない。

主要登場人物は:
●イランから亡命してきた高級軍人、過去の栄華を今一度甦らそうとハウスに投資する。男性社会の横暴さが気になる。
●父が30年かけて手にした大切な遺産(ハウス)を8ヶ月で失くしてしまう無職の女性。怠け癖が気になる。
●ハウス差し押さえに立ち会った警官、家主の女性に心が揺れる。家庭を愛せないトラウマが気になる。

こんな人々、日本の今の今にもたくさんいる。
僕が切なく、歯がゆい想いをしたのは、ほんのちょっとした過ちだけから
彼らの大切な普通の生活が大きな音を立てて崩れ去っていくことに
現実を視てしまったからだ。
本シネマのテーマ、悲劇の深さについて言葉では伝えられるわけもないが、
はっきりしているのは「誰のせいでもない、誰が悪いのでもない」ということ。
繰り返しになるが、
この悲劇が僕の周りにだって起こりうると共感するところが恐怖だった。

日常のちょっとしたトラブルを上質な映像と音楽で一級のサスペンスに仕上げたパールマン監督を称えたい。
映像が人物の感情に沿って変化していく、
ある時はじっと動かないまま息を殺す、
ある時は斜めに、
またぐるぐると回る、
そして対立する人の心を覗き込むようにめまぐるしく飛び交う。
映像に控えめながらぴったり寄り添う音楽の存在にふと気づく瞬間が意図されている、心憎い。

ジェニファーとベンについては言うことなし、ベスト作でしょう。

満足。
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