銀河鉄道の父 (2023)

文字数 631文字

【「雨ニモマケズ」で十分です】 2023/5/9


宮沢賢治の父親が主人公とはいえ、宮沢賢治のことはよく知らないし、読書好きの身なのに彼の著作を読んでもいない、ただ「雨にも負けず・・・」くらいしか知らないのでちょっとだけ躊躇したが役所広司さん、菅田将暉さんの父息子を見逃すわけにはいかなかった。

小説家は実生活においては一筋縄でいかないところに才能が輝くとはいえ、宮沢賢治も父親べったりの我儘息子、日本のアンデルセンになるという夢を追い求める中での病死、後世での評価を得たのは父親のおかげだという物語になっている、さほど事実と食い違いはないのだろう。
だからして、「銀河鉄道」でも「宮沢賢治」でもなく「銀河鉄道の父」という物語であることを鑑賞後しみじみと納得した。

シネマの醍醐味は何といっても映像が及ぼす力である。
作品のなかで忘れられないシーンが一ヵ所でもあり、きっとこの後も忘れ去ることはないだろうと感じる時、僕はシネマに感謝する。
本シネマには二か所そんなシーンがあった。
妹を野辺送りするクライマックス、メラメラと燃え上がる炎を背景に賢治が狂ったように経を唱える、そっと彼を愛おしむように励ます父。
銀河鉄道の通路をゆっくりと進み長男長女を見つけて合席を願い、行く先を訪ねる父。

最初に、「雨にも負けず風にも・・・」の詩しか知らないと心配していたが、この詩を知っていれば十分だった。
不覚にもこの詩を朗読する姿に落涙してしまった、銀河鉄道の父が朗読する姿に。
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