あるスキャンダルの覚え書き (2006)

文字数 641文字

【自分を解放しようとし自壊し続けた】 2007/11/11



物語を語る老女性教師の日記に秘められた哀しい願望、「友達が欲しい」。
友達、または友情は望むものなんかではないのに、
その意味では無邪気でエキセントリックな老女。
演じるジョディ・デンチからは「色気」を、広い意味での長年生きてきた結晶としての魅力が感じられない。根っからのいやな女、シネマの中でも「ババア」、「疫病神」と呼ばれるその素顔からは嫌悪感を感じるのみ。
そんな役作りにまずは参ってしまう。

完璧な人生を生き抜くことは幻想だってことはぼくも気づいている。
孤独、誤解、諍い、策謀、愛欲、貧困、プライド・・・・などなど
人間だからこそ悩む落とし穴がある。
老女が迷い込んだのは這い上がることのできない蟻地獄、常に餌を求めるその姿は哀れだ。

餌として狙われたのが、
ケイト・ブランシェット演じるアパークラスの妻にして母にして教師。
教え子との性関係は結局はスキャンダルでしかないことが予測できない貧困な想像力。
本来の無節操な人生観が垣間見えてくる、演じるケイトの薄っぺらさの表現にも参ってしまう。

その隙間に入り込む同僚の老教師。
スキャンダルがTV,週刊誌にリークされるエピソードも現実的でかつ病んでいる。
スキャンダルを道徳が抑制するシステムが効かなくなってしまった現代世界。
たわいない日常のスキャンダルだからと見過ごすことのできない、
文化の壊れを予感する。

自我の命ずるまま自分を解放しようとし、自壊し続けた二人の女性、
とても人事とは思えない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み