VORTEX ヴォルテックス  (2021)

文字数 723文字

【人は一人ぼっち】 2023/12/15


鬼才と評判のギャスパー・ノエ監督シネマとは初対面だった。
事前情報によれば末期心臓病の夫、認知症の妻の物語とのことだった、どうしても観てみたい気持ちになることもない、まるで自分たち夫婦のこの先を象徴するようで、もろ手を挙げて歓迎するわけにもいかず、シネマはエンタ ーテイメントがベースという信念にも反する・・・と言いながらシネマ製作作法を確認してみたいという一点で結局拝見した。

その製作作法とは、「すべて2画面構成」という特殊なカメラワークだ。
「すべて」というところが監督のこだわりだった。
物語は、少しづつ妻が変調をきたしていくのをなすすべなく見守る夫、80歳の二人の日常はそれでも連続する。 ひとり息子は薬物常用者で頼ることもできず、介護施設も自分の都合だけで拒否するよくある老夫婦(妻は既に思考することもないが)。

二人の終焉に至るまでを2画面で綴っていく。
夫婦の同じ時間・瞬間が2画面で写し出される。
向き合っている場合は微妙にかカメラの角度が違う、二人の気持が伝わりづらいことを示す。
徘徊する妻、探す夫、感情・行動のすれ違いが2画面にくっきりと表れる。
息子と三人での会話、画面の切れ具合が何を意味するのか。

「お家に帰りたい」・・・という認知症の定番のセリフ、
「人生は夢の中の夢のよう、あっという短さだ」・・・これまた今まで繰り返された嘆き、
二人の孤独死すら今では日常茶飯事でしかない。

そんなありふれた老夫婦が、まるで違う意思をもって共に生活しているのが現実だと嘲笑うかのような2画面シネマ。
2画面には驚かされたし、夫婦を演じたお二人も監督の意図にピタリと沿っていた、お見事。
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