【ナナフシギ~百~】
文字数 774文字
無言の会話が数秒間、場の空気を支配した。
石川先生ーーいや、石川先生の振りをした何者かが微笑を浮かべていた。対する祐太朗は笑みとは対極にある無表情。
「よくわかったね」
不敵な笑みを浮かべて石川先生の振りをした何者かがいった。だが、それを褒めことばと受け取るようなことは一切しないというような固い意志を感じさせるように表情ひとつ動かさずに祐太朗は訊いたーー
「お前は誰だ?」
「余裕のない男はモテないよ?」からかうように石川先生の振りをした何者かがいった。「まぁ、キミはまだ子供だけど」
「うるせぇ。こんな状況で余裕があるヤツなんて生きた人間にはいないだろうさ」
「それもそうだね」
そういいつつ、石川先生の振りをした何者かはすぐには正体を明かそうとはしなかった。ただまっすぐに祐太朗のことを見詰めていた。まるで、祐太朗の気持ちを全部見透かそうとしているかのように。
「......いい加減に答えろよ。それに、本物の石川先生は何処だ?」
「落ち着いてよ。あの先生なら無事だよ。わたしが彼女の身体を借りている間、あの先生は誰の手も加えられない場所で眠ってる。だから、この霊道に数日いても大丈夫だった。他の子もみんなそこにいるから安心して」
祐太朗はハッとしていった。「じゃあ!」
「そう。みんな、わたしがいなければとっくの昔に低級霊。現実世界じゃ神隠しっていわれて大騒ぎになってる。ただーー」石川先生の振りをした何者かはいいづらそうに口を噤み、そしていった。「あのハゲたメガネの男はどうするか、わからない。あの男はあっちにもこっちにもいちゃいけない」
「どういう意味だよ?」
祐太朗が訊ねても、その疑問に答えは返ってこなかった。痺れを切らして祐太朗はさっきした質問を繰り返す。
「で、テメェはーー」
「『ナナフシギ』のひとつ。プールには何がいるか、覚えてる?」
【続く】
石川先生ーーいや、石川先生の振りをした何者かが微笑を浮かべていた。対する祐太朗は笑みとは対極にある無表情。
「よくわかったね」
不敵な笑みを浮かべて石川先生の振りをした何者かがいった。だが、それを褒めことばと受け取るようなことは一切しないというような固い意志を感じさせるように表情ひとつ動かさずに祐太朗は訊いたーー
「お前は誰だ?」
「余裕のない男はモテないよ?」からかうように石川先生の振りをした何者かがいった。「まぁ、キミはまだ子供だけど」
「うるせぇ。こんな状況で余裕があるヤツなんて生きた人間にはいないだろうさ」
「それもそうだね」
そういいつつ、石川先生の振りをした何者かはすぐには正体を明かそうとはしなかった。ただまっすぐに祐太朗のことを見詰めていた。まるで、祐太朗の気持ちを全部見透かそうとしているかのように。
「......いい加減に答えろよ。それに、本物の石川先生は何処だ?」
「落ち着いてよ。あの先生なら無事だよ。わたしが彼女の身体を借りている間、あの先生は誰の手も加えられない場所で眠ってる。だから、この霊道に数日いても大丈夫だった。他の子もみんなそこにいるから安心して」
祐太朗はハッとしていった。「じゃあ!」
「そう。みんな、わたしがいなければとっくの昔に低級霊。現実世界じゃ神隠しっていわれて大騒ぎになってる。ただーー」石川先生の振りをした何者かはいいづらそうに口を噤み、そしていった。「あのハゲたメガネの男はどうするか、わからない。あの男はあっちにもこっちにもいちゃいけない」
「どういう意味だよ?」
祐太朗が訊ねても、その疑問に答えは返ってこなかった。痺れを切らして祐太朗はさっきした質問を繰り返す。
「で、テメェはーー」
「『ナナフシギ』のひとつ。プールには何がいるか、覚えてる?」
【続く】