【永世中立異常者】
文字数 2,127文字
感覚がぶっ壊れている人がいる。
それはいってしまえば、何でそういうことが出来るかわからないといった人たちのことーーいわばデリカシーがないとか、怖いもの知らずとかそういった類いのモノと考えていい。
ただ、人間、まったくもっていい子ちゃん、引くことはあっても押すことはないというのはどうかと思うのだ。というのも、それはもはや波風を立てたくないと震えながら嵐が過ぎ去るのをただ待っているだけだからな。
そう、人間、時には大胆に前に出なければならない。舐められっぱなしでは、相手は付け上がるだけだ。一度心理の風下に立てば、生涯取り返しがつかないのが人の世というモノ。そうならないためにも、時には強気に出てもいいのではないかと思うのだ。
かくいうおれも、実をいえばかなりの小心者で、人に厳しいことをいえないタイプなのだけど、逆に一度スパークしてしまうとその場にいる人たちに対して無差別に爆撃を始めるような非常に面倒な性格でもある。
ただ、元が小心でもあるせいか、そうそうスパークすることはないんだけどな。
とはいえ、状況は読まなければならない。ただ命知らずなだけでは、ことばの通り命の保障などないのだから。
さて、今日はそんな「命知らず」な話。正直、今考えたらどうかしてるなって話だ。
あれは高校三年の一月のことだった。
その当時はセンター試験も終わり、私立大の受験がスタートする辺りで、その日はおれもちょうど初めての大学入試を終えたばかりだった。
その日の試験は、これまでこの駄文集で書いてきたように都内でではなく、隣街である「川澄市」にて行われたのだ。そんなこともあって、スタートも午後からで、終わって五村に戻ったのも夕方五時くらいだった。
五村に着くと、一緒に受験したユースケと別れ、そのまま帰路につくこととなった。
とはいえ、試験後ということもあってか妙に気分が高揚しており、腹も減っていたこともあって、おれは一度駅に戻り、当時行きつけだった精肉店にて焼き鳥を二、三本買って食べ、駅ビルにて本やCDを観て回ったりしていた。
まだ受験が終わったワケではない。だが、試験後の解放感というのは他にない気持ちよさがある。そう考えるとおれも随分と気が大きくなっていたのだと思う。
駅周辺の探索を終え、漸く帰ることに。まぁ、この当時のおれはというと、家に最短で帰るルートに飽き飽きしてしまっており、回り道するのが日課となっていたのだけど、その日も同様にそうすることにしたのだ。
その日に辿ることとしたのは、消防署横の運動公園を通って帰るルートだった。
そこは自然に囲まれたとても広い公園で、平日昼間はウォーキングをする老人、土日祝日となれば野球をやる少年たちや家族づれで溢れる平和な場所だったーー昼間は。
問題は夜だ。この運動公園は夜になると不審な車が立ち並び、見るからに怪しい男たちが徘徊するヤバい場所だった。
とはいえ、夕方はまだ平和なほうだ。不審な車も人物もいないし、アウトローが徘徊するにはまだ明るすぎた。
が、その日は公園沿いの通りに入った時点で何やら騒がしかったのだ。おれは、またバカが騒いでいるんだろうと思い、そのまま自転車を走らせた。が、その先に待っていたのはーー
某政治団体の人間と街宣車だった。
まぁ、某政治団体といって選挙活動でもあるのかなと思う人がいるかと思うんだけど、そういう穏やかな政治団体ではないのだよ。
ほら、もっとこう、暴力を使ってさ、政治的なイデオロギーを実現しようとする団体がいるワケですよーーあんまいわせるな。
まぁ、そのうるさかった音っていうのが、街宣車から流れる「大日本帝国万歳!」みたいな感じの唱和だったのだ。大日本帝国って、いつの時代の話だよ。
まぁ、こういう人たちに関しては大体危ない話が多いのだけど、この当時のおれは兎に角、右も左もわからないような狂ったガキだったのだ。そして、おれはーー
堂々と街宣車とツナギ姿の男たちの横を通り過ぎていったのだ。
今だったらこんな頭の可笑しいこと絶対しないのだけど、多分、この時は試験終わりでどうかしてたんだろうな。まぁ、そしたらーー
「待てッ!」
何やら物騒な声が聴こえて来るでないの。しかもスピーカーの潰れた音声で。おれはサッと振り返った。するとーー
ツナギ姿の男たちが怒号を上げながら追い掛けて来るでないの。
もう必死の形相でツナギ姿の男たちが走って追い掛けてくるでないの。
いや、おれ何かしたかって感じではあるんだけど、「大日本帝国万歳ッ!」ってシャウトする街宣車の前を堂々と素通りしたことが気に障ったんだろうな。そんな狂った状況の中、おれはというと、
ワッホイとか叫びながら走り去ったのだ。
受験でフラストレーションが溜まってたんだろうな。正直、スリル満点で楽しくて仕方ないって感じだったんだ。本当に命を知らない。
まぁ、自転車に対して人間の足ですから普通にツナギの男たちを撒いてそのまま帰路に着いたんですが、アレ、捕まってたらヤバかっただろうなと改めて考えると普通に顔が青ネギになりそうです。マジで状況は読んだほうがいい。
命はくれぐれも大切に、な。
アスタラビスタ。
それはいってしまえば、何でそういうことが出来るかわからないといった人たちのことーーいわばデリカシーがないとか、怖いもの知らずとかそういった類いのモノと考えていい。
ただ、人間、まったくもっていい子ちゃん、引くことはあっても押すことはないというのはどうかと思うのだ。というのも、それはもはや波風を立てたくないと震えながら嵐が過ぎ去るのをただ待っているだけだからな。
そう、人間、時には大胆に前に出なければならない。舐められっぱなしでは、相手は付け上がるだけだ。一度心理の風下に立てば、生涯取り返しがつかないのが人の世というモノ。そうならないためにも、時には強気に出てもいいのではないかと思うのだ。
かくいうおれも、実をいえばかなりの小心者で、人に厳しいことをいえないタイプなのだけど、逆に一度スパークしてしまうとその場にいる人たちに対して無差別に爆撃を始めるような非常に面倒な性格でもある。
ただ、元が小心でもあるせいか、そうそうスパークすることはないんだけどな。
とはいえ、状況は読まなければならない。ただ命知らずなだけでは、ことばの通り命の保障などないのだから。
さて、今日はそんな「命知らず」な話。正直、今考えたらどうかしてるなって話だ。
あれは高校三年の一月のことだった。
その当時はセンター試験も終わり、私立大の受験がスタートする辺りで、その日はおれもちょうど初めての大学入試を終えたばかりだった。
その日の試験は、これまでこの駄文集で書いてきたように都内でではなく、隣街である「川澄市」にて行われたのだ。そんなこともあって、スタートも午後からで、終わって五村に戻ったのも夕方五時くらいだった。
五村に着くと、一緒に受験したユースケと別れ、そのまま帰路につくこととなった。
とはいえ、試験後ということもあってか妙に気分が高揚しており、腹も減っていたこともあって、おれは一度駅に戻り、当時行きつけだった精肉店にて焼き鳥を二、三本買って食べ、駅ビルにて本やCDを観て回ったりしていた。
まだ受験が終わったワケではない。だが、試験後の解放感というのは他にない気持ちよさがある。そう考えるとおれも随分と気が大きくなっていたのだと思う。
駅周辺の探索を終え、漸く帰ることに。まぁ、この当時のおれはというと、家に最短で帰るルートに飽き飽きしてしまっており、回り道するのが日課となっていたのだけど、その日も同様にそうすることにしたのだ。
その日に辿ることとしたのは、消防署横の運動公園を通って帰るルートだった。
そこは自然に囲まれたとても広い公園で、平日昼間はウォーキングをする老人、土日祝日となれば野球をやる少年たちや家族づれで溢れる平和な場所だったーー昼間は。
問題は夜だ。この運動公園は夜になると不審な車が立ち並び、見るからに怪しい男たちが徘徊するヤバい場所だった。
とはいえ、夕方はまだ平和なほうだ。不審な車も人物もいないし、アウトローが徘徊するにはまだ明るすぎた。
が、その日は公園沿いの通りに入った時点で何やら騒がしかったのだ。おれは、またバカが騒いでいるんだろうと思い、そのまま自転車を走らせた。が、その先に待っていたのはーー
某政治団体の人間と街宣車だった。
まぁ、某政治団体といって選挙活動でもあるのかなと思う人がいるかと思うんだけど、そういう穏やかな政治団体ではないのだよ。
ほら、もっとこう、暴力を使ってさ、政治的なイデオロギーを実現しようとする団体がいるワケですよーーあんまいわせるな。
まぁ、そのうるさかった音っていうのが、街宣車から流れる「大日本帝国万歳!」みたいな感じの唱和だったのだ。大日本帝国って、いつの時代の話だよ。
まぁ、こういう人たちに関しては大体危ない話が多いのだけど、この当時のおれは兎に角、右も左もわからないような狂ったガキだったのだ。そして、おれはーー
堂々と街宣車とツナギ姿の男たちの横を通り過ぎていったのだ。
今だったらこんな頭の可笑しいこと絶対しないのだけど、多分、この時は試験終わりでどうかしてたんだろうな。まぁ、そしたらーー
「待てッ!」
何やら物騒な声が聴こえて来るでないの。しかもスピーカーの潰れた音声で。おれはサッと振り返った。するとーー
ツナギ姿の男たちが怒号を上げながら追い掛けて来るでないの。
もう必死の形相でツナギ姿の男たちが走って追い掛けてくるでないの。
いや、おれ何かしたかって感じではあるんだけど、「大日本帝国万歳ッ!」ってシャウトする街宣車の前を堂々と素通りしたことが気に障ったんだろうな。そんな狂った状況の中、おれはというと、
ワッホイとか叫びながら走り去ったのだ。
受験でフラストレーションが溜まってたんだろうな。正直、スリル満点で楽しくて仕方ないって感じだったんだ。本当に命を知らない。
まぁ、自転車に対して人間の足ですから普通にツナギの男たちを撒いてそのまま帰路に着いたんですが、アレ、捕まってたらヤバかっただろうなと改めて考えると普通に顔が青ネギになりそうです。マジで状況は読んだほうがいい。
命はくれぐれも大切に、な。
アスタラビスタ。