【藪医者放浪記~死拾壱~】

文字数 1,060文字

 猿田源之助の顔から汗が流れ落ちた。

 まるで、それが合図のようであった。構えを取った男はかまいたちのような速さで動き出した。右、左、右。腕が伸びた。

 が、猿田はそれをすべて受け切り、抜き手を男の顔目掛けて突き付けた。

 男はそれを大きく背を反ってかわした。かと思いきや、その勢いでうしろに回りながら、猿田のアゴを思い蹴りつけた。

 よろける猿田ーー犬吉とお雉は息を飲んだ。

 猿田はすぐさま体勢を整えた。目はまだ正気を保っていた。男は既に目の前にいた。縦にした拳を猿田の顔面に向けて伸ばした。

 猿田は一気に男に近づいた。

 そして、右腕を男の首に回し、左手で縦拳の拳を繰り出した右手を掴み、勢いで腰を回し、男を思い切り投げた。

 男は地面に叩きつけられるも、すぐさま猿田の顔を蹴り飛ばした。仰け反る猿田。男はそのまま猿田の足を刈った。勢いよく地面に叩きつけられる猿田。男は首を軸に跳ね起き、寝転んだ猿田を思い切り踏みつけようとした。

 大きく地面が轟いた。男の足は土埃を立てていた。猿田は間一髪、男の足をかわしたのだった。猿田は男の力が下に集中していることを利用し、左手で男の右腕を掴み思い切り引っ張った。そして、右足を男の首、左足を男の右脇下から回し、力いっぱい締め上げた。

 男の呼吸が止まる音がした。

 男は空気を遮られながらも、空いている左手で猿田の脇腹を何度も殴りつけた。猿田の顔が苦痛に歪んだ。猿田は左手で男の右腕を締め上げながら、右手で男の横面と頭を殴りつけた。その拳が効果的だったかわからなかった。だが、男が確実にこの状況をイヤがっていたのは確かだった。

 男は力まかせに猿田を持ち上げた。猿田はそれを察知するとすぐさま男の身体から離れた。男はうしろにふらついた。猿田はすぐさま前に進み、男の左側頭部に右の上段蹴りを叩き込んだ。男は尚も倒れなかった。猿田は怯む男の顔面に左、右の拳を叩き込んだ。

 男は更にうしろに仰け反った。猿田はすかさず前蹴りを繰り出した。が、男はそれをとっさに左手で捌きながら入り身をし、右肘を猿田のみぞおちに打ち込んだ。

 猿田の動きが瞬間的に止まった。男は猿田の顔面に右の蹴りをブチ込んだ。猿田はうしろに倒れそうになったのを何とか堪えた。男は猿田に蹴りを繰り出そうとした。

 が、猿田は脇差代わりに差していたサイを抜き出して、男の蹴りを迎撃した。男は痛みを隠しきれなかったようで、痛がりながら、うしろに下がった。猿田は追い討ちを掛けようとした。だがーー

「痛いじゃないのーッ!」

 時が止まった。

 【続く】
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み