【擬人化した夏 VS 武装した暴力団員300人】

文字数 3,059文字

 頭が熱い……、これって、熱中症かしら……?

 のっけから何気持ち悪いことをいっているんだと思われるかもしれんがね、結論からいうとーー

 熱中症気味なんだわ。

 とはいえ、そこまで重症ってワケでもなく、シンプルに頭がボーッとする。あと、汗も出ないし、地味に気持ち悪い。だけど、寝込むほどじゃないからまた困る。

 考えてみると、日本人は「気味」というワードが苦手な傾向にあると思う。

 例えていうなら、「風邪気味」というワードだ。「風邪気味」というとまるで、「まだ大丈夫」みたいな傾向があると思うが、それって早い話が黄色信号なワケで。普通に考えたらいつでも停止できるようにはしておかなければいけないのだろうけど、どうも日本人というのは、手遅れになるまでは大丈夫と考えがちな傾向にある気がする。

 いや、手遅れになってからじゃダメなんだけどな。

 まぁ、かくいうおれも、「気味」というワードを持て余しているというか、「熱中症気味」となると、休むには決定打に欠けている気がしてもう少し頑張ろうという気になってしまう。

 でも、それでは遅いのだ。

 わかっていても自分を止めることができない。現代人はオーバーヒートしがちな傾向にあるとおれは思う。

 まぁ、最近は、もし夏が擬人化したら、50℃のサウナと-30℃の冷凍庫を10分ごとに行き来させるという苦行をさせるか、武装した300人の暴力団員と対決させるしかねぇなというようなどうしようもない妄想をしがちなのだけど、それくらい夏の暑さがイヤなのだ。

 それこそ、『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』に出てきたハヌマーンみたいに、太陽相手に、

「お前、暑いからどっかいけ」

 といっただけで、太陽を遠ざけられるなら苦労はしないんだけど、ほんと何とかならんかね。てか、どっかいけっていわれて、

「わかった、そうしよう」

 とか納得してどこかへいっちゃう太陽も太陽なんだけどな。

 まぁ、おれも昔から暑さには弱く、度々熱中症気味になってはダウンしていたのだけど、ここ数年は筋肉量が増加したせいか、体温自体が高くなり、熱も籠りやすくなったのか、より暑さに弱くなった気がしてならないのだ。

 てか、熱中症気味でこんな文章書いてて大丈夫なのか、って話だけど、まぁ、いいのよ。頭が回らない縛りをして文章を書いてると思えばいいし、そういうときに書いた文章も文章で、何となくいいんじゃないかとーー気のせいか。

 そんな感じなんで、暑さに負けないクールな文章を書いていきたいと思うのだーーまぁ、もう負けてるんだけど。

 ただ、そういったテーマで文章を書くとなると、中々どういったことを書こうかと考え込んでしまうのだが、この話題でも書いておくか。

 あれは、おれが大学二年のこと。

 ここに来て初めて大学時代の話をするのだけど、まぁ、おれという人間にとって大学時代は一種の暗黒時代で、客の入らなかった時の新日本プロレスよりもっと暗い時代だったわけだ。

 何がそんなにダメだったのか、といわれるとシンプルにつまらなかった。友達もほとんどいなかったし、講義もサークルもつまらないし、私生活もつまらないし、頭の可笑しいチンピラにはよく絡まれるしとろくなことがなかった。

 まぁ、おれの通っていた大学近辺のチンピラの間では『◯◯大狩り』と呼ばれるエクストリーム・スポーツが流行っていたんだ。『◯◯大狩り』とは早い話が、ちょっと小金を持っているバカ大学生を引っ掛けて金を巻き上げるという、シンプルな犯罪行為だったわけだ。

 まぁ、そんな感じで大学時代のおれはそういう絶望的な治安の悪さに辟易するスラム街のような街に住んでいたのだけど、たったひとつ、その街の中で気に入っていたものがあった。

 それが海だった。

 というのも、おれは大学生になるまでは実家暮らしだったんだけど、実家の所在地が早い話が海なし県で、海なんて年に一度見れれば多いといっても過言ではないような場所に住んでいたのだが、大学時代におれが住んでいたその街は海沿いに位置し、部屋の窓を開ければそれはそれは綺麗な海が見えたものだった。

 まぁ、潮風のせいで夏は暑いし、雨が降れば暴風が酷くて傘が役に立たないというデメリットもあるのだけど、やはり海沿いの街というのは中々に魅力的で、ちょっと授業に空きがあると海で波模様をただひたすらに追い続けるということも普通にやったものだった。

  というか、授業だけでなく、普通に夜中とかでも唐突に波の音を聴きたくなったら海へと出向くなんてこともよくやっていたのだがーー

これはとある深夜のことである。その日もやはり、おれは海へと向かったのだった。

 海に着き波の音を聴きながら、海岸を歩く。夜の海というのは独特な雰囲気があって、どこかこの世ではないような不気味さや、浮世離れした何かがあるのだけど、その日もおれはただ無心に海岸を歩いていたのだ。

まぁ、おれがちょうど歩いていた海岸というのが、歩いて進める場所に限界があって、気づけばおれはその末端まで到達してしまっていたわけだ。

 じゃあ戻るか、とデッドエンドから引き返して元の地点まで戻ろうとしたのだ。がーー

 可笑しな音が聴こえたのだ。

 これにはおれのノミの心臓も跳ね上がり、目に、耳に意識を集中したのだけど、夜闇と波の音が邪魔をして、そこに何があるか、何がいるのかわからない状態だった。

 で、気づけば風も出てきたのかビュウビュウとけたたましい音がおれの内耳に響きだしたんだわ。しかも、夏の風のような爽快な感じはなくて、衣服や髪の毛も風の影響は受けないし、何かが変だった。

 おれはひたすらに神経を研ぎ澄まして歩いた。だが、目の前に広がるは無限に広がる闇、闇、闇……。何も見えはしない。

気持ちが悪い。足場の悪い中でバランスを崩すと、そのままどこかへ引き摺りこまれてしまいそうで、おれは足元に気をつけながら先を急いだ。

 そうして前に進むといつしか風の音も強くなり、禍々しい雰囲気が漂い始め、早く海から引き上げようと早歩きになっていた。

 ……風の音が響く。孤独感が煽られる。そして、おれは気づいた。マズイ。足を早めた。早く行かなければ。早く、早く……。

 よく見れば、目の前では黒い影がふらふらしている。イヤな気配がし、おれはその影から身を隠すようにして先に進んだ。

 いつしか普通の汗に混じって脂汗を掻いていた。このままではーー

「あれ、五条じゃん。何してんの?」

 唐突に名前を呼ばれビクッとしたが、よぉく目を凝らしてみるとーー

 すぐそこに大学の同期がいました。

 あぁ、よかったと思いつつ、ここで何をしているのか訊ねてみると、おれと同じく海を歩きにきたのだという。

ちょうど同期と出くわしたこともあり、深夜の可笑しなテンションもあって、これから飲もうかということになったのだけど、お陰でおれはほっと胸を撫で下ろし、その同期と共に海岸を後にしたのだった。

 まぁ、これだけ?って感じなのだけど、これだけなのだ。まぁ、拍子抜けといえば拍子抜けかな。まぁ、強いていうなら、あの風の音に関してなんだけど、

 アレ、風の音じゃなくてたくさんの人の呻き声だったわ。

 いやぁ、不気味だね。

 深夜徘徊はほどほどにしましょう。
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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