【そのメス猫、オセロット】

文字数 2,413文字

 何事にも始まりはある。

 当たり前すぎる話にアクビが出るぜって話だけど、何かを続けていると案外、その始まりというものを忘れがちになるのもまた事実だ。

 前々回までは『五条氏の初舞台篇』ということでやってきたのだけど、それもおれにとって芝居の「始まり」であったワケだ。

 しかも、その中で出てきた要素が、今日におけるアホみたいなシナリオの原点になっていたりして、芝居人生の始まりが色んなものの始まりになっていることはいうまでもない。

 例えば、和雅や弓永だ。

 和雅はいうまでもなく、おれが演じた役の名前ではあるが、後々、自分のシナリオにて、キャラクター的に逆の存在として転生し、今では埼玉弁を操る孤高の青年となっている。

 弓永は、そもそもおれが適当につけた偽名から、あんな人を食ったエリート主義の警官になってしまったワケだ。

 まぁ、弓永は名前が気に入ってて、それ以前もキャラクターの名前として使ってたんだけどね。ちなみに、その時の弓永は二五歳の真面目で性格のいい職務熱心な警官で、武井愛の後輩という今とは逆のキャラクターだったワケだ。

 まぁ、弓永に関しては『恨めし屋』を書くに当たってシナリオが変な方向にいきすぎないようにってことで祐太朗の年齢と性格に合わせたからあぁなったのだけども。

 こんな感じで初舞台というのは、おれに色んなモノを残したのだけど、実は舞台が終わった後もちょっとした始まりがあったのだ。

 まぁ、『初舞台篇』が終わったばかりなのにまた『ブラスト』の話かよって感じなんだけど。タイミング的にもちょうどいいんで書いてくわ。んじゃーー

 十一月末、初舞台篇を終えて三週ほど経った頃のことだった。おれは五村市民センターにて、『ブラスト』の公開稽古に参加していた。

 劇団員からの参加者としては、ゆーきさん、あおい、正さん、テリー、尚ちゃん、弥生、大野さん、あと数人くらいいたと思う。

 ちなみに、ヨシエさんとショージさんは、子供が生まれる関係で既に退団ーーしてたと思う。ここら辺の記憶が地味に曖昧なのだけど、今回の話には大きな影響はないのでそういうことで。薄情な男よのぉ。

 さて、公開稽古は『ブラスト』でやっている準備運動や発声に少し手を加えたものと、インプロという即興劇的な遊び、団員が書いてきた短編の台本を数グループに分かれて実演する等、楽しいイベントがモリモーリだった。

 と、そんな中、団員が書いた短編台本なのだけど、おれも書いたのだ。

 唐突すぎるといえば唐突なのだけど、そう、おれも台本を書いていた。役者として舞台に立つ前に、おれはこころに誓っていた。

 自分のシナリオを書く。その思いは意外と早い段階で実現していた。何か書きたいーー台本の募集が掛かった時点で思っていた。その内容は比較的早い段階で決まっていた。

 そのシナリオは、とあるコンビニに強盗が入るのだが、その時たまたまトイレにいたどん底の青年が強盗を撃退して自信を取り戻すというシンプルなモノだった。

 そのシナリオには主人公とは別に狂言回しというか、ナレーター的な存在がいた。

 そのキャラクターは女性で、とある警察署に所属する警察官だった。身長は一六七センチ、年齢は三二歳。名前は、サラ・パレツキーの書く女性探偵『VIウォーショースキー』の名前をもじったモノ。その名前とはーー

『武井愛』だ。

 そう。今連載している『ミス・ラストスタンド』に出てくる五村市の女性探偵である『武井愛』と同じ名前だ。

 実のことをいえば、この『武井愛』、おれが初めて創作したキャラクターだったりする。

 職業こそ違うとはいえ、後々書いたシナリオでは早い段階で元警官の探偵と設定が変わり、かつ人物像としては『ミスラス』の武井と殆ど変わっていない。

 まぁ、『ミスラス』の武井はかなり泥臭いけど、最初の頃は今の和雅みたいなポジションで、その後、色々あって二八歳になったり、長谷川八重という双子の姉がいるという設定になったり、所属していた警察署が変わったりと変化はあったとはいえ、和雅や弓永と比べると設定に殆ど変化はない。

 そもそも『ミスラス』自体、武井を復活させるために書いたシナリオなんよな。

 和雅、弓永と別の形で復活したんで、いつか武井も復活させようとは思っていたのだけど、それがまぁ、『ミスラス』だった。

 そっそ、先にいったけど、元々弓永は武井の警察官時代の後輩って設定だったんで、それに肖って『ミスラス』にも弓永を出すつもりだったのよね。ついでにいうと、和雅と武井は恋人同士って設定でした。つまりーー

 和雅、弓永、武井は元々ひとつのシナリオのキャラクターだったのだ。

 今はその名残だけがシナリオに反映されているけど、いずれその三人が一堂に会するシナリオを書きたいもんだわ。

 さて、話がズレてしまったけど、おれが初めて書いたそのシナリオの主役というのは、うだつの上がらない大学生だったのだが、このキャラクターも後々別のキャラクターとして転生していたりする。それがーー

 和雅の相棒、外山慎平だ。

 というか、モデルになった人物が同じだから殆ど同じ人物なんだけどさ。

 そんな感じで、初めて書いたシナリオは後々書くことになるシナリオの色んな要素が入っていたのだけど、それを人が読み、それを演じて貰うというのは、書いた側としてはそれはそれは緊張したものだった。

 が、結果としては成功だった。

 おれのシナリオをやった人たちの芝居がそもそも上手だったからというのもあるけど、発表が終わった後、会場内は拍手と歓声が飛んだのだ。嬉しくて仕方なかった。

 まぁ、そんな経験もあって、今は台本ではなくて小説という形でシナリオを書いているワケだけど、やはり初心は忘れてはいけないな。

 ちょっと湿っぽくなりすぎてしまったんでここで終わるわ。読み返したら、多分恥ずかしい文章になってると思う。知らんけど。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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