【アナタは過去から帰還する】

文字数 3,477文字

 人は変わってしまうものだ。

 これに関しては異論があっても全然おかしくないし、特に驚くことでもない。

 これまで、自分のシナリオの中でも「人は変わってしまう」だとか、「人は変わらない」だとかいってきはしたけれど、結局はどっちなのか。それは、

 結局はその人次第なのではないか。

 また投げ槍な答えをって感じだけど、最終的に帰着するのは、その人が辿ってきた軌跡がすべてなのではないかと思う。

 これまでの人生の中で、何を考え、何を思い、何をし、何を見、何を経験してきたのか。それらすべてが複合し、個人に影響を与え、その結果どうなるかということなのだと思う。

 そりゃ、『三つ子の魂百まで』という諺があるように、人の本質は三歳以降変わらないのかもしれない。とはいえ、何の変化もないっていうのは、それはそれでどうかと思うのだ。

 だって、変化していないって、成長していないことと同じだからな。

 まぁ、そんなおれも友人たちからは、

「お前は変わらんよな」

 といわれがちなのだけど、とはいいつつ、

「お前が芝居や居合を始めるなんて思ってもなかったよ」

 といわれることもある。結局、おれは見た目や遊びに対する姿勢というのは殆ど変わっておらず、内にあるスピリットだけがいいように変わっていったんじゃないか、と個人的に思っている。

 まぁ、見た目が余り変わっていないといっても、確実に顔にシワは出来始めていると思うし、かつてはヒョロヒョロだった身体も今では服の上からでも何となくわかる程度に筋肉がついているんで、間違いなくマイナーチェンジはしているんだけどな。

 しかし、どうしてこんな話をするのか、といえば、昨日の夜に昔好きだった教育ドラマの主役だった子の近影を見たからだった。

 その子は、そのドラマに出演以降は特に目立った活動もしていなかったようで、そのまま活動から手を引いたとのことだった。

 だが、まぁ、この情報化社会で、動画やブログ、果てはこんな駄文にて誰でも情報を発信できる世の中になったワケだけど、そんな溢れ返る情報の中で、たまたまその主役だった子が様々なメディアに登場していると知ったのだ。

 で、おれも懐かしさに駆られてその子の名前で検索を掛けてみたのだ。そしたら、見事ヒット。その子の現在のお姿を拝見することとなったのだ。

 で、その感想としては、「なるほど」って感じ。このひとことにネガティブな印象を受ける人も多いかも知れないが、別にネガティブな印象などおれは受けていない。

 ただ、あの子が成長して大人になると、こんな感じになるんだなといった意味での「なるほど」ということだ。

 とはいえ、ドラマ出演後の境遇というか、その手の話に関してはちょっと思うこともあったんよな。その子がどうというか、その子の周りがどうって意味で。やっぱ人間なんてエゴの塊なんよな。

 で、結局、見れてよかったの?悪かったの?って話になると、結論としては、よかったんじゃないのかね。ほんと、便利な世の中になったと思うよ。その分不便にもなってるけど。

 しかし、そんな感じで久しぶりの人を見ると、驚きなことも随分あると思うのだ。

 おれもここ最近になって、何年も会ってなかった同級生と再会することが多くなってその度に驚くことがあるのだけど、今回はそんな話をしていきたいと思う。

 まぁ、ひとりだけに限った話ではないので、これもまた個人個人で一回に分けて話していこうかなと思う。

 これは、去年の半ば頃だったと思う。ちょうど、おれはいつもの勤めをまったく関係のないシナリオのことや居合のことを考えながらダラダラとやっていたのだ。

 まぁ、おれの勤めのことに関しては詳しいことは伏せておくわ。別に知りなくもないだろうけどさ。

 で、おれの勤務態度に関していえば、正直あまりよくはないと思う。というのも、基本的に敬語を殆ど使わないからだ。スタンスとしては、この文章の感じがそのまま私生活のことば使いになっていると思って貰えればパーフェクトだろう。

 前々からコイツは礼儀なんて欠片もないとは思っていたよ、と思われても仕方ないだろうけど、流石に付き合いの浅い人だとかには敬語は使うわい。

 でも、個人的に「敬語を使うことが目的になる」のがイヤでね。その先のコミュニケーションを見据えると、ある瞬間になって敬語というものが確実に邪魔になることも少なくないんで、相手によっては早々に敬語を取っ払ってしまうことが多いんよ。

 ま、それで何とかやれているんだし、批判されても「だから何?」って話なんだが、こんなことを話してるとまた長くなるんで、それはそれで終わり。

 んで、そんな感じで勤めをしているんだけど、おれのいる部署っていうのが、結構社内の色んな人とカウンター越しに顔を合わせる機会が多くてな。

 で、ある時、ひとりの女性がお願いします、と書類をおれに渡してきて、おれもいつもの調子で「あいよ」って感じで雑務をこなしたのだ。そしたらーー

 その女性が好奇心旺盛な感じでおれを見てくるではないの。

 まだ例のアレが蔓延する前で、おれもマスクなんか着けてないから顔を丸出しにしてて、その人はマスクを着けてて口許がどうなってるかはわからなかったんだわ。

 で、その時はその時で雑務を終えて、その人は、ありがとうございますといって立ち去ったんだけど、やっぱその視線がどうも気になって仕方なかった。

 それからもその人とは何度か顔を合わせていたんだけど、やはり何か好奇の目でおれを見てくるじゃない。

 んで、それから二週間ほど経って、またその女性が来たワケだ。んで、いつも通り雑務を終えたんだけど、その女性は立ち去る様子もなくただ立っているじゃない。おれも思わず、

「どうしたの?」

 と訊ねたのだ。そしたら、

「五条くんだよね?」

 といわれたのだ。まぁ、名札にはちゃんと名前も書いてあるからな。そんな感じで、そうだけどと返したのだ。そしたら、

「あたしのこと、覚えてる?」

 というでないの。怖い話だったら、この女性というのが、昔遊び捨てた女で、おれを追い掛けてここまで来たって感じなんだろうけど、そんなことはなく。

 でもさ、本当に見覚えなかったんだわ。マジで誰だかわからなかった。マジで知らないストーカーに刺されてジ・エンド、ハッピー・エンディング、デストロイ・アンド・ノーフューチャーって思ったからな。

 仕方なしにおれも、わからんと正直に答えたんだわ。そしたら、

「あたしだよ。大川だよ!」

 いや、だからわからんもんはわからんーー

 思わず「あぁッ!」って声を上げたからな。そう、この大川、

 小、中学校の同級生だったんだよな。

 これまでこの駄文集に出て来たことはないんだけど、大川はおれの同級生だった女子で、しかも、塾も同じだったのだ。これは「記憶のブラックホール」の異名を返上しなければならないんじゃないのって感じなんだけど、そうでもないんよ。じゃあ、何故わからなかったのか。

 ひとつはシンプルに大川がマスクをしていたから。案外、人は目元だけからは顔全体の情報を読み取ることができないものだ。だからこそ、目元だけ切り取れば美人なのに、マスクを外したらーーってことが普通にある。

 理由のふたつ目だが、これはーー

 大川が痩せすぎていたことだ。

 中学生からいっても当時の大川は太っているワケでもなく、むしろ痩せていたほうだった。

 確かに、中学時代はギャルでメイクが派手だったのもあるだろうけど、だとしても、この時もメイクは薄っすらながらもちゃんとしていたし、それを別にしてもこの時の大川は痩せすぎていた。

「え、随分と痩せたんじゃない?」

 思わずそう訊ねると、

「あー、多分、それはサーフィンのせいだよ」

 聞くところによると、大川は暇があれば海にサーフィンに出掛けているのだとか。

 確かにサーフィンは滅茶苦茶痩せる。おれはやったことないのだけど、大学時代にサーフィンにハマったデブがひと月後に滅茶苦茶スマートになって現れた時は酷く驚いたもんだった。

 それからも、大川とは会う度に話す仲にはなったのだけど、何故かおれの家を知っていたり、誰も覚えていないようなおれの情報を覚えていたりと、中々に驚きなことも多かった。それこそ怖い話だよな。

 そんな大川も出産がどうとかで最近は全然会わないのだけど、近々また戻ってくるらしい。だから何だって話なんだけどさ。

 ちなみに外山にこのことを話したところーー

「大川? 誰だっけ?」

 とのこと。うん、外山は変わらんな。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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