【ナナフシギ~拾捌~】

文字数 1,006文字

 闇の中で鳴り響く音は神経に染み入る。

 それは恐らく視界という人間がいちばん頼りがちな感覚を殆ど不能にされた結果、視覚に次ぐ感覚のひとつである聴覚が敏感になるからであろう。

 弓永と森永は、音のしたほうへと目をやる。ひと筋のライトが闇を裂いている。だが、視界は悪い。共鳴する何かの音が、ふたりの顔を引き釣らせる。

「何だよ、今の音......」森永がいう。

「知るかよ」

 ぶっきらぼうにいう弓永。だが、その声は強張り震えている。森永はそれを指摘しなかった。というより、そこに気づく余裕すらなかったのかもしれない。

 弓永は持っている懐中電灯の光をゆっくりと上のほうへと向けた。

 職員室、そう書いてあった。

「職員室......?」森永はいう。「今、ここから聴こえてきたよな......?」

「......だな」

「どうするよ......?」

「どうするって、入って確認する以外ないだろ」

「は......? お前、正気でいってんのかよ?」

「あ?」威圧的に弓永はいった。「お前こそ正気かよ。さっさと調べてここを出ねえと、先生も、おれたちもここから出られなくなっちまうんだぞ?」

「なぁ......、それ、鈴木がウソいってるって考えられない?」

「はぁ?」

 弓永は呆れ果てたようにいう。だが、森永は疑う姿勢を崩そうとはしない。

「だってさ、可笑しくない? おれも何か雰囲気に飲まれてそんな感じかなあって思ったけどさ、でもーー」

 弓永が森永の胸ぐらをグイッと掴んだ。

「てめえよぉ、死にたかったら勝手に死ねよ。おれはイヤだからな。今まで何を見てきたんだよ。祐太朗がこういう時に冗談をいうようなヤツじゃねえことはてめえもわかってんだろ......!」凄む弓永にビビる森永。「いいか、そうやってアイツを疑うならずっとここにいろ。おれはひとりでも道を見つけるからな」

 そういって弓永は職員室の中へ足を踏み入れた。

「ちょっと待ってくれよぉ」

 弓永に続いて森永も職員室に入って行き、弓永の腕を掴む。

「離せよ、気色悪ぃな」弓永が思い切り森永の腕を振り払う。「......ん?」

 弓永は突如しゃがみ込んだ。

「どうしたんだよ......」

「これ......」

 弓永が懐中電灯を床に向けた。と、そこにはワインレッドのリボンがひとつ。弓永はそれを拾い上げる。森永は目を見開いた。

「それって......」

「石川先生のだ......」

 空気が急に冷え込んだ。

 【続く】



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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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