【桜の季節に、囲まれて】

文字数 2,836文字

 入学式の季節となった。

 このご時世だと、入学式もミニマルになったり、そもそも入学式自体やらないということもあるようだけど、やはり入学式のシーズンというのは何かと賑やかな感じがする。

 別に騒がしくなるワケではなくて、こんなご時世であっても何となく気分が高揚するというか、気分が弾むような雰囲気があるような気がするのだ。

 かくいうおれはというと、入学式とはこれといって関係がないのだけど、とはいえこの時期になると、昔、新入生だった時期というのを思い出しがちになるのだ。

 まぁ、おれだって曲がりなりに学生だったのだ。小学、中学、高校、大学と計四回、新入生をやったことになる。

 では、その当時のことを覚えているかというと、小学生時は入学式を終えて家に帰ろうとすると、階段でこけて膝を思い切り擦りむいてしまったのだけど、そこで大丈夫かと声を掛けてくれたのが、あっちゃんだったワケで。そこで小学校初の友人が出来たのだ。

 中学は正直印象にない。というのも生徒は小学からの持ち上がりで、これといった変化もなかったからな。もはや、いつもと同じ日常って感じ。覚えてることといえば、数学担当の先生の視線がやたらとギラついてたことぐらい。

 高校は、やはり周りに変化があったってこともあって、緊張してたな。会話できるヤツといえば同じ中学から来たあっちゃんと成川ぐらいで。その後、オリエンテーション旅行なるモノがあったのだけど、その時のことはまた後日。

 さて、大学のことなのだけど、ぶっちゃけてしまうと、大学の入学式は出ていないのだ。

 理由?ーー面倒くさいから。

 これまたクズな理由で入学式を欠席したモンだなとも思えるのだけど、大学の入学式は自由参加でな。別に出なくていいか、となったのだ。ちなみに卒業式も出てないんよな。理由はやっぱり面倒くさいから。

 さて、そんな感じの入学式を過ごした五条氏ではあるけど、個人的には入学式よりも入学後の雰囲気のほうが印象的だったりする。

 というのも、やはり入学式後の雰囲気というのは、どこか晴れやかで明るいし、新入生としても目新しい光景に緊張しつつも胸を踊らせるからなんだろう。

 さて、今日はそんな入学式後の日常に起きた話。気分がいいからって余り調子に乗るモンじゃないって話をしていこうと思う。

 あれは大学一年の時のことだった。

 その頃はまだ大学にも入ったばかりで、右も左もわからないような状況の中、新しく始まったひとり暮らしに、フリーダムな学生生活に胸を踊らせていたワケだ。

 そして、その期待に応えるかのように、入学式後にあった学科のオリエンテーションの時点で三人の友人を作り、スタートダッシュにも成功したのだーーまぁ、その内のふたりは早々に大学を辞めるんだけども。

 ちなみに三人の中で唯一大学を辞めなかった山上くんは、四年間通して数少ないおれの友人となったのでした。アイツ、元気にしてるかなぁ。それはさておきーー

 おれはその日、山上をはじめ、オリエンテーションで仲良くなった三人とキャンパス内を闊歩していたのだ。

 キャンパス内は新歓ムード一色で、どこのサークルも部活も新入生を勧誘するので忙しく動き回っていた。そんな中、おれは唐突にすごい下らない遊びを思いついてしまったのだ。というのはーー

 如何に多くのサークルのチラシを集められるかを試したくなってしまったのだ。

 まったく以てバカなんじゃないかって感じなんだけど、多分、賑やかな雰囲気に水を差したくなったんだと思う。性格の悪い五条氏のやりそうなことだよな。

 まぁ、そんな感じでおれは色んなサークルのチラシを集めに集め始めたのだ。

 その様を見て、山上くんも「お前、バカだな」と笑っていたのだけど、そういわれればいわれるほどにおれも燃えてしまい、

 同じ人から何枚ものチラシを貰うという暴挙にまで出るようになったのだ。

 もうね、明らかに「えっ?」て顔をする人もいたよな。そりゃそうだ。こんなガイキチな新入生がいたら、シンプルに引く。

 まぁ、そんなことをしていたらボート部に顔を覚えられたらしく、

「おぉ、五条じゃねぇか。またチラシか。チラシもいいけど、新歓パーティに来いよ。たらふく食わしてやるから」

 みたいな感じでいわれたりするようになりまして。何で名前覚えられてんだって感じだけど、一回目にチラシ貰ったときに名乗ったら、そのまま覚えられてしまったというワケで。ちなみに、ボート部の新歓には行かなかった。

 もはや、ナチュラルに害悪な五条氏ではあったのだけど、そんな中、

「おぉ? お前何してんだ?」

 そう声を掛けられたのだ。何事かと振り返ると、そこには、

 滅茶苦茶な巨体の男がいたのだ。

 もうね、背がデカいのは勿論、横にもデカくて、新歓というより、世紀末、終末感といったほうがふさわしいような体格をしてた。ワケわかんねぇか。

「え、あ、いやぁ……」

 おれはどもってしまった。コミュニケーション能力がカスなクセにでしゃばったことをするからそうなる。とはいえ、急な巨体の登場に戸惑ったのもあるよな。かと思いきや、

「お、どうしたどうした?」

 周りに人が集まってくるでないの。

 男に女に、もう兎に角おれのもとに人が集まってくるでないの。

 これにはおれも冷や汗を掻くしかなかった。だって、その巨体をはじめ、

 色んな人に取り囲まれてたんだからな。

 もうね、戸惑うしかなかったよな。そうかと思いきや、巨体はいった。

「おれたち、『ドレミファドん』ってバンドサークルなんだけど、お前、チラシたくさん持ってるんだな」

 そう、おれはやらかしていた。そう、この近辺でチラシを配っていたドレミファドんの人間からチラシを貰いまくっていたのだ。

 巨体はそれを見ていたのだ。

「てことは、うちに興味あるってことだろ?」

 巨体はおれに詰め寄る。そして、おれを取り囲むドレミファドんのメンバーは好奇の目でおれを眺めているじゃないですか。

「は? 何いってんだよ。おれはただ、チラシを集めまくってるだけだから!」

 なんて、いうワケなかったよな。

 そんなことがいえるほど、おれは尖ってなかったし、根性もなかった。

「新歓、来るよな?」

 巨体はいう。これに対しておれの答えはーー

「……行きます」

 完全にビビっていた。

 こうしておれはドレミファドんのサークル室へと半ば強引に連行され、名前等の個人情報を書くこととなり、気付けばドレミファドんの一員となっていたのでした。

 ちなみに、件の巨体は「コータさん」というのだけど、後にこの時の話をコータさんにすると、

「あれ、そうだったっけ」

 全然覚えてなかったのだ。

 軍は捕虜の顔など一々覚えないらしい。ま、そんなモンだよな。

 間違っても調子に乗って配られているチラシを片っ端から回収することはしないように。

 普通はしねぇか。

 てか、この話、前に書いたっけ?ーー全然覚えてないけど、まぁ、いいや。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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