【ジャヌスとガイキチ】

文字数 3,887文字

 人には「本音と建前」がある。

 これはごく当たり前のことで、自分がブラストにて芝居初体験の人に必ずといっていいほど教えることだ。

 人は笑顔の裏にナイフを隠し持っている。あるいは悪意を腹に溜め込んでいる。人間不信になる人が後を絶たないのも無理もない。

 が、芝居をやるとなると、この「本音と建前」を忘れてしまう人が多いーーというより、日常生活の中で、自分の「本音と建前」を意識していないというか。

 もはや、人は日々の生活の中で「本音と建前」を分離することを当たり前とし過ぎている。だからこそ、横暴な年上や上司に対して忖度するようになるワケだ。

 でも、そういうのを我慢してこその社会人だろという意見が出てくるかもしれないが、その忖度のせいで生産性が落ちていたとしたら、あるいはトラブルの種となっていたら、果たして本当に我慢する価値はあるのだろうか。

 確かに、自分の非で怒られることに対しては我慢しなければならない。が、完全に不当なことに対して黙ってペコペコしていて本当にいいのだろうか。

 まぁ、何度も話しているけど、おれはブラストにてベテランの年上勢に黙ってペコペコしていたら、酷い目に遭った。どの道、文句をいわれるなら、自分の意見をいって文句をいわれたほうがずっといい。「沈黙は金」はこういう場合は必ずしも当てはまらない。

 ただ、発言するに当たって自分が「できる人間である」というのが大前提だけどな。「できないヤツ」がウダウダいっても単なるクレームで、面倒臭がられるだけだ。まぁ、おれもできないヤツだけどさ。

 それはさておきーー昨日は随分とおれらしくないようなことを書き散らしてしまったので、今日は『居合篇』は休み。代わりに本当にどうしようもない話を書いていくことにするわ。

 というわけで書いてくーー

 あれは中学二年生の時だった。

 また中学時代の話かと呆れ果てるヤツ山の如しって感じなんだろうけど、まぁ、この時代の異常性は過去何度も話してるからそこに話題が集中するのも無理はない。

 さて、その頃のおれといえば、インターネット上にて荒らし行為をしまくるガイキチもいいところで、殆ど唯一といっていいほどお行儀が良かったのは、とあるお絵描きサイトのみという、ガイキチ・オブ・ガイキチだった。

 そんなおれが主戦場としていたのは、とある囲碁ができるサイトだった。今はそのサイトも存在していないのだけど、おれが何故囲碁のサイトに常駐していたかといえば、友人とチャットで楽しむためだった。

 ちなみに、おれは囲碁はこれっぽっちも打てないんだわ。麻雀ならできるけど。

 とまぁ、そんな感じで友人の付き合いでその囲碁サイトにたむろするようになったのだけど、とはいえ、おれがやることといえば、友人との会話意外は基本的にヤバそうなヤツと対決するという、そんな感じだった。

 んで、おれら友人間では、とある共有のアカウントが存在した。それが、

『荒谷康子』だった。

 この名前を聴いてピンと来たヤツはシンプルにヤバイ。何故かといえば、このクソみたいな駄文集をちゃんと読んでいる人だからだ。

 そう、この女性の名前は、あの「康子先生」の名前だからだ。

 康子先生なんて久しぶりに名前が出てきたんで覚えている人もいないと思うのだけど、康子先生はおれたちの国語の教員で、あのもこみちの彼女(暫定)だ。まぁ、彼女といっても、色んな人に勝手にそう設定されただけなのだけど。

 まぁ、そんな康子先生の名前を使っていると下半身にアナコンダを引っ提げた変態どもが、

「女性なんですか? よかったらエロイ話しませんか?」

 みたいなことをいってくるので、その度に、

「あ? 誰がテメエみてえな変態と話するんだよ。ひとりでやってろボケ!」

 みたいな返信をして、相手が狼狽する様を見て楽しんでいたのだ。性格悪い?ーー当たり前だろ。

 とはいえ康子先生のアカウントが出てくるのは基本的にイタズラしたい時だけで、それ以外は普通に本アカを使っていたんよ。

 で、ある日のこと。おれはそのサイトに本アカでログインしたまま、ウィンドウを最小化してお絵描きを楽しんでいたのだ。

 そんな時である。

 唐突にダイレクトメッセージが来たのだ。

 名前は「マナ☆」みたいな感じだった。まさかの女子からのメッセージに有頂天ーーということもなく、むしろ絵を描く邪魔をするなって感じだった。

 まぁ、この頃は恋愛にはまったくといっていいほど興味がなく、一部の女子からは熱狂的に嫌われていたとはいえ、少なくとも話せる女子も普通にいたし、ネット上でも仲のいい女性は普通にいて、別に女性嫌いとかいうわけでもなかった。あと普通にノンケだしな。

 でもな、絵を描いている時に唐突にメッセージを送ってくるとは、何というって感じだったんよ。で、肝心のその内容というのは、

「こんちゃ☆仲良くしてね!」

 みたいな感じ。お星さまが好きなのかな?って訊きたくもなったけど、とりあえずよろしくみたいな内容で返信したのだ。

 で、すぐにお絵描きに戻ったんだけど、返信が異様に早く、

「よかったぁ☆てかクールな感じでカッコイイね!」

 みたいな内容が返ってきたのだ。まぁ、クールというか、お絵描きしてて片手間で返信してるからだったんだけども。

 ただ、そんなマナ☆とメッセージのやり取りをしていたのだけど、その中でやたらとおれのことを訊きたがるワケだ。

 まぁ、年齢と住んでいる都道府県くらいだったらまだいいのだけど、面倒なのはそこから彼女がいるか、どんな子がタイプか、挙げ句の果てには会わないかといった内容のメッセージまで来るじゃないの。

 これには流石にウンザリしてしまい、お絵描きのウィンドウを一旦最小化したのだ。

 さて、どうしたものか。マナ☆はぶりっ子だった。会話の端々に「にゃん☆」だとか「むぅー!」だとか、「てへっ☆」だとか、おおよそおれが口に出すだけで当局に連行されても可笑しくないセリフを平然というじゃないか。

 おれはどうも昔からぶりっ子といった人種が苦手だった。というのも発言そのものが非常に胡散臭いし、裏で何を思い、何を考えているかを考えると、どうにも近寄りがたいからだ。

 そこでおれは閃いてしまった。

 康子先生を投入しよう、と。

 本来、このサイトはひとつのアカウントでログインしていると、他のアカウントでログインできないようになっているのだが、残念なことにおれはその抜け道を見つけ、

 一度にいくつものアカウントでログインする方法を見つけてしまったのだ。

 やり方はもう覚えていないーーというか、そのサイト自体ないんで試しようがないのもある。とはいえ、その方法を使って、本アカと康子先生のアカで同時にマナ☆と会話してみることにしたのだ。

 早速、康子先生でログインし、マナ☆にメッセージを送る。

「おい、調子こいて☆とか付けてんじゃねぇぞ?」

 確かに☆のオンパレードは気になるとはいえ、康子先生のアカで話し掛ける口実があまりにもなさすぎて仕方なくイチャモンみたいな話し掛け方をしたワケだ。で、返信はすぐに来た。

「は? 何? てか、誰お前?」

 これがあのマナ☆なのだろうか。本アカのほうにはキャピキャピした星とか舞ってそうな文面の返信が来るのに、康子先生にはまるでチンピラ牛蒡みたいな文面であたし怖いッ!て感じだった。

 まぁ、そんな感じで本アカ、康子先生のアカで、交互にメッセージを送ったのだ。そのマナ☆のメッセージの変わりっ振りといったら酷いもんで、

「へぇ! そぉなんだぁ~! マナ☆ビックリ!」

「あ? テメエ、ケンカ売ってんのか? ◯すぞ」

「そうなんだねッ! コヨーテきゅんは彼女とデート行くとしたらどこにいく???」

「地獄に送るぞテメエ、コラァ!」

「そうなんだぁ☆! むぅー! ちょっと待っててね(汗) お母さんに呼ばれちゃった……」

「こっちは忙しいんだよ、ゴミが。国語教師の分際で調子乗んなよ!」

 とまぁ、これが同じ人間なのかと思えるような文面が交互にやってくるもんだから、ドン引きーーというより、逆に面白くなってきてしまってメッセージに加速を掛けたのだ。そしたらーー

 間違って本アカで康子先生のメッセージを送信してしまったのだ。

 これは流石にヤバイと思い、即座に弁明のメッセージを送ろうとしたのだが、

「あれ……? どーゆーことぉ?(汗)」

 みたいなメッセージが届いてしまったので、仕方なく康子先生のアカウントで、

「こういうことだよ!」

 とネタバラシをしたのだ。そしたら即座に、

「テメエは黙ってろ、ゴミ。◯すぞ!」

 と返ってきたのだ。いや、気づいてないのかよ。

 そんなこんなでマナ☆に◯されたら敵わないので、そのまま両方のアカウントごとログアウトしちゃいました。

 ちなみに後日、本アカでログインしたらマナ☆がいて、

「ひさぴょーん! ねぇお話しよぉ?」

 とかメッセージを送ってきました。いや、気づいてねぇのかよ。仕方なしにまた、おれ、マナ☆、康子先生(おれ)の三つ巴のやり取りをすることとなったのでした。

 まぁ、案の定また誤爆してすぐにログアウトしたけどな。

 人には「本音と建前」がある。あなたの周りにいるキャピキャピした麗しい婦女子も、もしかしたら裏で「◯すぞ!」とかいっているかもしれない。女って怖いわ。

 まぁ、普段は真面目な振りして、裏で荒らしにイタズラにをしまくっていたおれもおれなんだけどな。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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