【ゴリアテVS骸骨男】

文字数 3,193文字

 類は友を呼ぶという。

 これは事実だろう。そもそも本当に仲のいいヤツというのは、自分の写し鏡であって、たまにイラッと来る時は、大抵自分の真の姿が露呈したり、それを暗に示唆しているのだ。

 まぁ、これが余り仲の良くない相手だとシンプルに波長が合わないこともあって、過度に気を使っていたり、過度に落ち着いていたりと、「過度に」どうかしている場合が多い。

 ただ、中には自分の写し鏡のようだから故にその人物を嫌うということもある。

 そう、類は友を呼ぶというのは、似た者同士ではあるが、あくまで似ているというレベルであって、自分のパーソナリティを侵害するレベルではなかったりする。

 自分のパーソナリティを侵害するレベルで不快な同類、それはいってしまえば、

 自分の負の部分を象徴する人物だ。

 人は自分と真逆の合わない人を苦手と思うのが一般的だが、自分の負の部分を可視化して見せられるのもイヤなものだ。それが、他人を通してだったら余計で、モノマネに怒る人なんていうのは、まさにそれだろう。

 また、モノマネとかでなく、自分の負の部分と似通ったモノを持つ人も、同様に自分の見たくないものを図らずも見せられているワケだから、それは不愉快だ。

 とまぁ、初っぱなから五条氏らしくないお堅い話をしてしまったワケだけど、おれには案外そういった「負の同類」というのは多い。

 おれにとっての「負の同類」、それは「怠惰な人」だ。もっと砕いていうと「面倒臭がりな人」だろうか。

 だからか、そういう人を見るとおれは不思議とちゃんとしてしまう。「おれが頑張らなきゃ」と思ってやるのではない。

 そういうヤツと同類と思われたくないのだ。

 いってしまえば、そうやって真面目に作業することが自分にできる最後の抵抗なのである。

 ただ、ひとつ考えてみて欲しい。

「鈍臭い」、「オタクっぽい」、そういう理由で誰かをイジメたり、嫌ったりすることは普通にあるだろう。だが、そうやってイジメたり、嫌ったりする人の中には、本当にそういう一面はないのだろうか?

 本当は、そういう部分が少なからずあって、それを認めたくないだけではないのか?

 とまぁ、昨日一昨日と『富士急篇』を書いてきたのだけど、ちょうどいいタイミングなので、この話を書いていこうかと思う。

 中三の二学期も終わりの頃のことだ。

 中三の話が多いなとも思われるのだけど、やはり受験期で気を張っていたからか、やたらと印象的な出来事が多い気がするのよね。まぁ、単純に変なのが多かったというのもあるけど。

 話を戻そう。

 二学期も終わりの頃となると、学期末の成績というのが現実味を持ってやってくる。おれもこのままではマズイかなと思っていた。

 そんな中、学校では選択授業という名の休憩時間、またの名を内職時間が平然と行われており、おれは焦りと苛立ちを感じていた。

 内職できるなら、自分のやりたい勉強をすればいいじゃんとも思われるのだけど、当時のおれはバカ正直というか、授業となったらその授業をちゃんと受けなければ、みたいな強迫観念のもとに授業を受けていたものだから内職にしろ、授業中に寝るといったことができなかったのだ。ホント、バカですねぇ。

 それはさておき、おれが当時受けていた選択授業は確か国語だった。といっても、やることといえば漢検を受験するための勉強で、受験とは殆どリンクしないような内容だった。

 ちなみに、一緒に受けていたメンツにはキャナと立川がいた。

 キャナはもう説明するまでもないだろう。今現在でも関わりのある現ポスドクのエリートで、可笑しなことが大好きなファニーな人だ。

 立川は給食の校内放送の回で出てきた、サッカーの授業でイキっちゃう系男子であり、健太郎くんを敵視する男だった。

 考えてみれば、健太郎くんも立川も、成績はいいけど血の気も多いという意味では似た者同士だったな。どうでもいいけど。

 さて、事件はとある選択授業後に起こった。

 どうも隣のクラスが騒がしいのだ。

 その騒がしさは次の授業が始まって少ししても収まらず、次の休み時間におれは隣のクラスにいる麻生に話を聴きに行ったのだ。

 この麻生もまた凄い人物で、また後々話をするとして、とりあえずは隣のクラスの騒動だ。どうも麻生がいうには、

 もこみちに何かあったらしいのだ。

 もこみちに関しては富士急ジェットコースター篇にて説明しているので説明はいらないだろう。そう、イキっては人をバカにする割にヘタレな骸骨男で、名前の割に似ているのはスティーブ・ブシェミというワケのわからないヤツだ。

 が、この時点ではまだ話が明るくないとのことで、おれは麻生に礼をいってクラスに戻ったのだ。

 放課後、学校をふけ、そのまま塾へ向かう。

 ちなみに、麻生も同じ塾ーーというか麻生はその塾の最古参であり、当時大学の赤本を解けるほどの学力を持つ化け物で、かつ学年での成績も『体育祭篇』で出てきた榎本と一位、二位を争うほどだった。

 しかも、ふたりとも家が近所で、榎本は卓球部部長、麻生は副部長という、優秀なヤツはやはり凡人とはひと味もふた味も違うのだろうといった感じだった。さっきもいったけど、麻生に関してはまた詳しく話す。

 塾へ着くと麻生は当たり前のように机に向かって難関高校の数学を氷上を滑るプロフィギュアスケーターのように鮮やかに解いていた。

 そんな麻生に会釈をしつつ、あの一件について話を訊いてみた。すると麻生は、

 爆笑し始めたのだ。

 詳しく話を訊いてみようにも、麻生は笑うばかりでことばを紡げない。麻生が落ち着くまで話を待ち話を訊くとーー

 もこみちの教科書の至るところに卑猥な落書きがされていたというのだ。

 具体的にいうなら、よくAVで耳にしそうな用語や女性器、男性器といったワードや絵が下手クソな字と下手クソな絵で書かれていたというのだ。

 これにはおれも笑ってしまった。しかも、犯行は選択授業の最中に行われており、犯人も目撃されていたのだ。その犯人とはーー

 高橋だった。

 高橋とは富士急お化け屋敷篇で初登場した、自称「極真空手の覇者で、遊戯王の世界チャンピオンで、世界一のポケモンマスターでありピカチュウマスターで、元アメリカ軍の訓練生で、メジャーリーグからスカウトされた」という世界化け物人間傑作選を寄せ集めたみたいなウソをつく高身長のパーフェクト・ヒューマンだった。ウソっていっちゃったよ。

 イキった骸骨と大ウソつきのパーフェクト・ヒューマンの対決とか、もはや『サンダ対ガイラ』みたいだよな。『サンダ対ガイラ』を知らない!?観ろよ。最高の怪獣映画だから。

 まぁ、そんな感じでその日は塾に来たもこみちにも話を訊いてみようとしたんですが、

「アイツ、マジうぜえし!」

 の一点張りでした。対する高橋は、

「おれじゃねえし!」

 の一点張りでした。加瀬亮か、お前は。

 とまぁ、翌日になってキャナから更なる情報を聴きまして、何でも、その当時、どういうワケか高橋の担任でもなければ、もこみちの担任でもなかった小野寺先生がふたりを呼び出して話を訊き、高橋は目に涙を溜めながら、

「おれじゃないですッ!」

 といっていた模様。ちなみにもこみち情報と、高橋と同じ野球部のヤツが高橋本人から聴いた情報なんで確かな話だと思う。無関係の場に出てくるとか小野寺の頭はバグってんのか。

 まぁ、もこみちにしろ高橋にしろ、どっちにしても、どっちもどっちなんだけどな。

 まぁ、イキるのもウソをつくのも、自己顕示欲の為す行為には変わりないんで、もこみちも高橋も所詮は同類もいいとこなんよね。同類、互いをヘイトする。

 それからというもの、高橋の「おれじゃないですッ!」はキャナのトレンド入りし、未だに真似されるネタとなったのでした。一体、いくつネタがあるんだよ、この中学は!

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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