【藪医者放浪記~玖拾参~】

文字数 521文字

 まっさらな光景だった。

 狭くて畳張りの部屋の真ん中には黒く塗られた低い机とその前には座布団が一枚。辺りは棚で囲まれており、他にも書物がたくさんある。古くなった和紙と軽いカビ臭さが混じり合って何処か趣のあるにおいを放っている。

 ハッとしたのは茂作の気のせいだったらしい。茂作は首を傾げて障子を閉めた。だが、茂作は尚も何か納得していない様子だった。それもそうだろう。部屋の中には何もなかった。だが、部屋からは確かにモノ音がしたのだ。あれは一体。ネズミか?ーーならば音を立てた存在が見えなくても可笑しくはない。

 茂作は再び、だが今度は静かにゆっくりと障子を開いた。開いた、開いたーー

 微かに障子を開けて中の様子を確かめる。そこにはやはり何もいない。当たり前といえば当たり前だろう。だが、茂作は動かない。じっと待って部屋の様子を伺った。

 と、何かモノ音がした。

 辺りに響く喧騒ではなさそうだった。確かに周りのうるささを勘違いした可能性がないワケではない。だが、茂作にはこの部屋から何かしらの音が聴こえたという確信があったのかもしれない。そのまま中の様子を見守った。と、突然ーー

 何かが隙間から茂作の目を覗いて来た。

 茂作は驚き尻餅をついた。

【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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