【ナナフシギ~玖拾参~】

文字数 673文字

 深淵を見る時は、深淵もまたこちらを見ているーー

 そんな話があるが、闇の中ではいつだってハンターが獲物を狙っているのだ。闇討ちなどということばがあるように、暗闇は味方につければ頼もしいが、敵になれば厄介極まりない存在なのはいうまでもなかった。

 そして、それは亡霊と人間の関係をそのまま表したモノだった。

 悪霊の住処の中では、生きた人間は絶好の獲物でしかない。悪霊は肉眼では確認出来ないし、人間としても暗闇の中ではまともにモノを見ることが出来なくなる。

「何だ......」

 祐太朗はそういって辺りを見回した。が、やはり見えるのは暗闇ばかり。懐中電灯の灯りでさえ、闇に飲み込まれて消えてしまっていた。亡霊のモノと思われるヒソヒソ声がそこら中から聴こえていた。岩淵はいったーー

「目なんて、大した代物じゃありませんよ」

 これには祐太朗も困惑した。

「どういうことだよ」

「今の人たちは目で何かを見ることにこだわり過ぎです。テレビや映画を見たり、本を読んだり、最近出始めてきた携帯電話にかじりついたり。挙げ句の果てには仕事だ勉強だで頭を回転させ続けなければならない。そんなことばかりしていれば、血液は頭にばかり昇っていって、他の部分がおざなりになる。足腰は弱まり、頭に近い肩に力が入りがちになる。もっとモノなんて大雑把に見ればいいんですよ。霊感だってそうでしょう?」

 祐太朗はあからさまに呆れて見せた。

「......説教くさいジジイーー」

 ハッとした。祐太朗は目の筋肉を弛めてゆったりと回りを眺めた。肩の力を抜いて、ゆったりと。ゆったりーー

 見えた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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