【帝王霊~百弐拾漆~】

文字数 625文字

 馴染みのあった場所も空気が淀めばまるで別の世界のようだった。

 いつもなら当たり前のように顔パスな施設も、この時ばかりは通り抜けるのも緊張感が漂った。無駄に広い敷地内。灯りはちゃんと点いているとはいえ、ピンポイントに灯った明かりはむしろ闇を無限大に拡大させ、距離をとてつもなく遠く感じさせた。

「別に来る必要ねぇだろ」

 祐太朗がいうと、佐野めぐみはいつもの調子で不敵に笑って見せ、呟くようにいった。

「それはアナタの勝手な感想でしょ? こっちだって、アナタの妹のことでちょっと話があるんだよね」

「話って、お前が話すことなんて何もねえだろ」

「ふふ、どうだろうね? そんなことより、あまり出過ぎたマネしないほうがいいんじゃない?ーーほら」

 佐野が指差す先にはたくさんの明かり、明かりーー明かり。まるでたくさんのホタルがそこら中を飛び回っているようだった。祐太朗は小さく舌打ちをした。

「お前みたいな不審者対策としては上出来だと思うけどな」

「あら、そう?」佐野は嘲笑するような薄ら笑いを浮かべた。「それをいうなら、アナタも不審者のひとりなんじゃない?」

「んなワケねぇだろ。だってーー」

 祐太朗は口ごもった。そんなワケはない、だがもしかしたら可能性としてそう見られていることもなくはないかもしれない。

「だって、何?」

 佐野の質問に、祐太朗は答えなかった。代わりに答えるように佐野はいったーー

「自分の実家だから、不審者なワケがない。そういいたいんでしょ?」

 【続く】

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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