【ナナフシギ~玖拾弐~】

文字数 619文字

 生ぬるい空気が押し寄せて来た。

 体育館の中はいうまでもなく真っ暗だった。明かりを床に投げてみると、そこには普通の木目の床が並んでいた。ただ、そこには普通の体育館の空気、雰囲気はなかった。そもそもこの学校全体が霊道と化していることもあって、普通なワケがないのだが。

 たくさん連なったカギを全部解錠して重々しい扉を開けようとするも、音は重々しく響いたにも関わらず、見た目と想像にも反して鋼鉄の扉は簡単に開いた。まるでハリボテ。侵入者の存在を拒むというよりは、侵入者が来ることを想定していたかのようだった。

「入ってみますか?」

 と岩淵がいうも、祐太朗はすぐには足を踏み入れることなく、

「中、どんな感じだ?」

「どんな感じ、と申されましても、真っ暗で何も見えませんが」

「そうじゃなくて、霊の反応はどうだって聞いてんだよ」

 霊に対する反応なら祐太朗も感じていたはずだが、祐太朗を軽く凌ぐほどの霊感を持つ岩淵ならよりグロテスクな反応を感じていたのではと祐太朗も感じたに違いなかった。だが、岩淵は相も変わらず薄ら笑いを浮かべていた。そこには恐怖のような感情は垣間見えず、肝試しに来てヘラヘラとしている場違いなガキのようにしか見えなかった。

「さぁ、どうでしょうか?」

 まったく話にならなかった。祐太朗は舌打ちをして体育館へとゆっくりと足を踏み入れると、ゆっくりと前へと進んでいった。濃度の濃い闇が、電灯の明かりを飲み込んでいた。

 何かが動いた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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