【ナナフシギ~捌拾~】
文字数 602文字
エンジン音が内耳に、腹の奥底に響き渡る。
夜の19時半。時間としてはまだ早い。本来ならば霊道が開くのは午前0時であり、それまではまだまだ現実の時間が緩やかに流れ続けている。それに逆らうかのように首都高を一台の車が疾走していた。運転席に座るは岩淵、助手席には祐太朗がいた。
「いいんですか? こんなに早く出て」
岩淵が訊ねると祐太朗は頷いていった。
「いい。あの部屋にいたくない」岩淵に何故かと訊かれ、祐太朗は答えた。「......落ち着かない。それだけだ」
「なるほど。確かに、こんな時では家にいても浮き足立つばかりで落ち着くことはないでしょう。ですが、まだ早い。体力は温存しておくべきかと思いますが」
「ほんの少しでも、車で寝られたら寝ようとと思う」
「それは別にいいんですがね、車の座席で寝るのは身体にもストレスが掛かります。休んでいるようで、体力は多少消耗します。わたしとしてはあまりオススメしませんが」
祐太朗は何もいわなかった。と、突然に腹が鳴った。祐太朗の腹だった。祐太朗は何処か極り悪そうにした。岩淵はくくくと笑った。
「流石に出るのが早すぎましたね。夕飯なら用意していたというのに食べないんですから、空腹になるのも無理はありません。何故、食べなかったのですか?」
「おれのメシにも睡眠薬が入ってないってどうしていい切れるんだ?」
岩淵はふふっと笑った。車はハイウェイの黒点を切り裂いていた。
【続く】
夜の19時半。時間としてはまだ早い。本来ならば霊道が開くのは午前0時であり、それまではまだまだ現実の時間が緩やかに流れ続けている。それに逆らうかのように首都高を一台の車が疾走していた。運転席に座るは岩淵、助手席には祐太朗がいた。
「いいんですか? こんなに早く出て」
岩淵が訊ねると祐太朗は頷いていった。
「いい。あの部屋にいたくない」岩淵に何故かと訊かれ、祐太朗は答えた。「......落ち着かない。それだけだ」
「なるほど。確かに、こんな時では家にいても浮き足立つばかりで落ち着くことはないでしょう。ですが、まだ早い。体力は温存しておくべきかと思いますが」
「ほんの少しでも、車で寝られたら寝ようとと思う」
「それは別にいいんですがね、車の座席で寝るのは身体にもストレスが掛かります。休んでいるようで、体力は多少消耗します。わたしとしてはあまりオススメしませんが」
祐太朗は何もいわなかった。と、突然に腹が鳴った。祐太朗の腹だった。祐太朗は何処か極り悪そうにした。岩淵はくくくと笑った。
「流石に出るのが早すぎましたね。夕飯なら用意していたというのに食べないんですから、空腹になるのも無理はありません。何故、食べなかったのですか?」
「おれのメシにも睡眠薬が入ってないってどうしていい切れるんだ?」
岩淵はふふっと笑った。車はハイウェイの黒点を切り裂いていた。
【続く】