【一年三組の皇帝~死拾漆~】

文字数 1,096文字

 ゲームということばには色んな意味があると聞いたことがある。

 まずは単純に「遊び」という意味のゲーム。いってしまえば、この『ネイティブ』もゲームのひとつーーもっといってしまえば、これ自体がトランプゲームの中のひとつであって、本来はみんなで楽しむためにやるモノと考えていいだろう。

 実際、このネイティブは元々みんなが楽しむために始まったーー関口の意図は多分違うがーーモノだったはずで、そもそもこのゲームを楽しんでプレイしていた人はたくさんいた。だって、ぼく自身がそれを目の前で見ているのだから。

 で、ゲームということばには他にもこんな意味があるらしい。

「狩猟」

 そう、ゲームには狩りをするという意味もあるようだ。このネイティブは、はじめは遊びとして始まり、それから狩猟となった。クラスメイトの一部は見事にその遊びが実はトラップで、狩猟の餌食になってしまったというワケだ。そして、今、ぼく自身も狩られている。おそらく、やり口は同じだろう。

 ぼくの勝利は偶然だったのか?ーーいや、恐らくだけど、これは必然だった。

 まるでマンガの主人公みたいなことをいってしまったけど、恐らくぼくが勝つことは決まっていたのだ。

 そう、いってしまえば、ぼくが今戦っているのはひとり一人のプレイヤーではなくて、ぼくを取り巻いているグループそのモノだ。このゲームはぼくひとり対関口たちという構図になっているということだ。それはつまり、ぼくがディーラーをやらない限りはいくらでもイカサマがし放題ということになる。

 勝ったんじゃない、勝たされたのだ。

 勝てば勝つほどに気が良くなり、よりゲームにのめり込んで行く。勝っているという経験があるからこそ、抜け出すことも簡単には行かなくなってしまう。カモの完成。そう、今のぼくはカモになりかけたバケモノでしかない。勝ちの甘い匂いに釣られかけて、トラップに足を食われ掛けた愚かな存在。

「いやぁ、やっぱすごいねぇ、林崎くんは。じゃあ、早速次のーー」

「待った」

 ぼくはピシャリといった。一斉にぼくのほうへ視線が集まった。その目は非常に冷ややかで、どの目もぼくに向かって「逃げるのか?」と訴え掛けているようだったーー関口以外は。関口はやはり、笑っていた。

「どうしたのかな?」

「ちょっと」ぼくは意を決していった。「次はぼくにディーラーをやらせて貰えないかな?」

 一堂、「ハッ?」といった様子でこっちを見てきた。そうだ、確かめなければ。これで勝負していい手が来るか否かは完全な運否天賦となる。むしろ、負ける確率のほうが高くなったといってもいい。

「ちょっと楽しくなって来たわ。やらせてよ」

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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