【ダンサー・イン・ザ・パニック】
文字数 2,127文字
突然の知らせにはいつだって驚くモノだ。
そりゃ唐突に何かの知らせがあれば、誰だって驚くもんだろう。仮にそれがいい知らせであっても悪い知らせであっても。
そもそも何が起きるか予めわかっているようなことなんて殆どないし、それがわかっているというのは全知全能の神か、計算ずくで物事を回す能力に長けているかしかないだろう。
かくいうおれも、これまで予定通りに何かが起こってくれたことなどないといっても過言ではない。良いことも悪いことも、どちらもいつだって唐突だった。そして、それで喜んだことも、この上ない迷惑を被ったことも。
まぁ、その唐突さこそが人生の醍醐味だという人もいるかもしれないけど、おれは余りそういった突発的なイベントみたいなモノを楽しむだけの余力というか、余裕はない。
かといって、何もかもが予定通り、レールの上を走る列車の如く行き先がすべて決まっているというのも好きではないのだけどーーどっちなんだよって話だな。
さて、今日はそんな唐突に舞い込んで来た話に関して書いていこうと思う。長くなるだろうし、数回に分けて書いていこうと思うんで、今日は比較的短めで。
あれは大学四年の十月末頃のことだった。
大学四年ともなると、おれのマインドの中にはパニックとかいうゴミが巣喰っていて、人生最悪だった時期といって過言でないのだけど、まぁ、本当に最低最悪。この時期を再び経験するくらいなら死んだほうがマシと思うくらいには思い出したくもない時期だったワケだ。
そう。考えてみれば、パニックの発症も唐突な出来事だった。何の予兆も予告もなく起きて、その後数年の人生を腐食させたのだから、本当にろくでもないモンだと思う。
それはさておき、大学四年の時は他にも色々と面倒なことが多く、精神的にも疲弊しまくっていた時期だった。
そんな中、こんなメールがスマホに届いた。
「ジョーお疲れ! ちょっと話したいことがあるんだけど、○○時に練習室に来れるかな?」
メールの差出人は同じサークルの鯨井くんだった。鯨井くんは、おれの所属していたバンドサークルにおいてギタリストとして活動しており、オリジナルのバンドを組んで精力的に活動していた青年だった。ちなみに、現在はとあるバンドでメジャーデビューして活動し続けている。あと、鯨井は仮名な。
そんな鯨井くんから連絡があり、おれも何だろうといった感じだった。彼とは特に一緒にバンドもやっていなかったし、これといった貸し借りもしていなかった。
そうなると困ったモノだった。
おれもこの時期はサークルに復帰していたとはいえ、パニックも多分一番酷かった時期でもあったこともあってーーしかも、パニックのことを他人にひた隠しにしていた時期でもあったこともあって、出来ることなら人と会うことも、ちょっとした用事も避けたかった。
しかし、こんな風に鯨井くんから声掛けがあったのだし、無下に断るのも申し訳ないなと正直思ったよな。そんなこともあって、おれは色々と考えに考えた結果、
「わかった」とメールを打ち、「何か持っていくモノとかあるかな?」
とメールを返信したのだった。
鯨井くんからの返信はそれからすぐにあった。その内容はーー
「ありがとう! 特に必要な物はないよ。時間も○○時とはいったけど、練習時間内なら自由に来てもらって大丈夫だから気楽に来てね」
ということだった。とはいえ、別にこれといって予定もなかったので、おれは研究室を後にして、そのまま練習室に行くことに。
とはいえ、中々研究室を出ることが出来ず、練習開始後、少しして漸く練習室に着くこととなった。おれは遅れたことを詫びつつ練習室に入っていった。
室内では既にメンバーが五人、練習していた。
そのメンバーは、鯨井くんをはじめ、鯨井くんと一緒にオリジナルバンドを組んでいたドラムのよっぴー、サークルの後輩であるベースのジュンジュン、サークルの同期であり遊び仲間であるギターの江田、そして、他サークルの後輩である松村くんとそんな感じ。
演奏中ではあったが、鯨井くんはおれの顔を見ると軽く会釈をしてくる。それから一曲演奏し終わり、小休止。鯨井くんが、
「お疲れさま。来てくれてありがとう」
おれも会釈を返し、それからメンバーたちとも軽く会話をした。で、それから鯨井くんに話を訊いてみることに、
「で、今日は何をすればいいの?」
すると、鯨井くんはこういったーー
「これからやる曲で踊って欲しいんだ」
……は?
ちょっとよくわからないですね。
ほんとこんな感じだった。だって、よくわからないじゃない。踊って欲しいって。おれ、別にダンス得意じゃないし、むしろ苦手だしな。とはいえ、折角呼んでくれたのだし、
「まぁ、別にいいけど、肝心の振り付けは?」
こう訊ねると、鯨井くんはーー
「今から振り付けして」
うん、ちょっと意味わからないですね。
そもそも、おれそんなことしたことないしな。まぁ、それはそれとして、
「出来るかなぁ……。てか、これ、ここで踊るだけでいいんだよね?」
すると鯨井くんはーー
「違うよ、本番でもやるんだよ」
おれは呆然とした。
【続く】
てか、これ以前も書かなかったっけ?
そりゃ唐突に何かの知らせがあれば、誰だって驚くもんだろう。仮にそれがいい知らせであっても悪い知らせであっても。
そもそも何が起きるか予めわかっているようなことなんて殆どないし、それがわかっているというのは全知全能の神か、計算ずくで物事を回す能力に長けているかしかないだろう。
かくいうおれも、これまで予定通りに何かが起こってくれたことなどないといっても過言ではない。良いことも悪いことも、どちらもいつだって唐突だった。そして、それで喜んだことも、この上ない迷惑を被ったことも。
まぁ、その唐突さこそが人生の醍醐味だという人もいるかもしれないけど、おれは余りそういった突発的なイベントみたいなモノを楽しむだけの余力というか、余裕はない。
かといって、何もかもが予定通り、レールの上を走る列車の如く行き先がすべて決まっているというのも好きではないのだけどーーどっちなんだよって話だな。
さて、今日はそんな唐突に舞い込んで来た話に関して書いていこうと思う。長くなるだろうし、数回に分けて書いていこうと思うんで、今日は比較的短めで。
あれは大学四年の十月末頃のことだった。
大学四年ともなると、おれのマインドの中にはパニックとかいうゴミが巣喰っていて、人生最悪だった時期といって過言でないのだけど、まぁ、本当に最低最悪。この時期を再び経験するくらいなら死んだほうがマシと思うくらいには思い出したくもない時期だったワケだ。
そう。考えてみれば、パニックの発症も唐突な出来事だった。何の予兆も予告もなく起きて、その後数年の人生を腐食させたのだから、本当にろくでもないモンだと思う。
それはさておき、大学四年の時は他にも色々と面倒なことが多く、精神的にも疲弊しまくっていた時期だった。
そんな中、こんなメールがスマホに届いた。
「ジョーお疲れ! ちょっと話したいことがあるんだけど、○○時に練習室に来れるかな?」
メールの差出人は同じサークルの鯨井くんだった。鯨井くんは、おれの所属していたバンドサークルにおいてギタリストとして活動しており、オリジナルのバンドを組んで精力的に活動していた青年だった。ちなみに、現在はとあるバンドでメジャーデビューして活動し続けている。あと、鯨井は仮名な。
そんな鯨井くんから連絡があり、おれも何だろうといった感じだった。彼とは特に一緒にバンドもやっていなかったし、これといった貸し借りもしていなかった。
そうなると困ったモノだった。
おれもこの時期はサークルに復帰していたとはいえ、パニックも多分一番酷かった時期でもあったこともあってーーしかも、パニックのことを他人にひた隠しにしていた時期でもあったこともあって、出来ることなら人と会うことも、ちょっとした用事も避けたかった。
しかし、こんな風に鯨井くんから声掛けがあったのだし、無下に断るのも申し訳ないなと正直思ったよな。そんなこともあって、おれは色々と考えに考えた結果、
「わかった」とメールを打ち、「何か持っていくモノとかあるかな?」
とメールを返信したのだった。
鯨井くんからの返信はそれからすぐにあった。その内容はーー
「ありがとう! 特に必要な物はないよ。時間も○○時とはいったけど、練習時間内なら自由に来てもらって大丈夫だから気楽に来てね」
ということだった。とはいえ、別にこれといって予定もなかったので、おれは研究室を後にして、そのまま練習室に行くことに。
とはいえ、中々研究室を出ることが出来ず、練習開始後、少しして漸く練習室に着くこととなった。おれは遅れたことを詫びつつ練習室に入っていった。
室内では既にメンバーが五人、練習していた。
そのメンバーは、鯨井くんをはじめ、鯨井くんと一緒にオリジナルバンドを組んでいたドラムのよっぴー、サークルの後輩であるベースのジュンジュン、サークルの同期であり遊び仲間であるギターの江田、そして、他サークルの後輩である松村くんとそんな感じ。
演奏中ではあったが、鯨井くんはおれの顔を見ると軽く会釈をしてくる。それから一曲演奏し終わり、小休止。鯨井くんが、
「お疲れさま。来てくれてありがとう」
おれも会釈を返し、それからメンバーたちとも軽く会話をした。で、それから鯨井くんに話を訊いてみることに、
「で、今日は何をすればいいの?」
すると、鯨井くんはこういったーー
「これからやる曲で踊って欲しいんだ」
……は?
ちょっとよくわからないですね。
ほんとこんな感じだった。だって、よくわからないじゃない。踊って欲しいって。おれ、別にダンス得意じゃないし、むしろ苦手だしな。とはいえ、折角呼んでくれたのだし、
「まぁ、別にいいけど、肝心の振り付けは?」
こう訊ねると、鯨井くんはーー
「今から振り付けして」
うん、ちょっと意味わからないですね。
そもそも、おれそんなことしたことないしな。まぁ、それはそれとして、
「出来るかなぁ……。てか、これ、ここで踊るだけでいいんだよね?」
すると鯨井くんはーー
「違うよ、本番でもやるんだよ」
おれは呆然とした。
【続く】
てか、これ以前も書かなかったっけ?