【ベッドの上から見た風景】
文字数 1,967文字
考えることは疲れる。
まぁ、それをいったら、こうやって文章を考えるのも疲れるといえば疲れるのだけど、同時に楽しみでもあるのはいうまでもなく。
そもそも人間には基礎代謝というものがあって、何もせずとも生きているだけでエネルギーを消費するのだから、ものを考えるという行為だけでもそれなりに疲労を感じるのは当たり前なのだ。
ただ、ものを考えるのも楽しいんよな。だから止められない。だからこそ、こうやって文章を書き続けてしまう。そして、それはどの分野でも同じだと思うのだ。
さて、今日はちゃんと『初舞台篇』の続きを書く。ただ、マンネリにはしたくないんよな。神敬介ネタを止めるか。うーん、悩ましい。
あらすじーー「本役が決まったが、相手役の尚子さんが悩んでいるらしいと聞いた五条氏は、尚子さんにご挨拶のメッセージを送った。尚子さんからの返信に、五条氏は改めて闘志を燃やすのだった」
うーん、普通よね。何つうか、もっとパンチが欲しいんよ。つまらんというかね。まぁ、追々だな。さっさと本編いくわ。ちなみに出てくる人物や団体の名前は全部フェイクなんでよろしく。では、いくーー
さて、役を貰ってひと月もすると、稽古も荒立ち稽古になった。
前にも説明したけど、荒立ち稽古というのは、台本を持ちつつ舞台装置の制約もなしに、とりあえず芝居をやってみるといった感じだ。
この時点でセリフは全部頭に入っていたが、全体の流れを確認するという意味合いも兼ねて、台本を持って芝居をすることとなった。
おれは病人役なので、ベッドに寝ている設定なこともあって、会議室のテーブルをベッドに見立てて芝居をすることとなった。寝返りを打てば即奈落の地獄のベッドなのは気になったが、寝返りをしなければいいだけなので、多少の注意力があれば何の問題もなかった。
机に寝転がりながら出番を待つ。出演場面の稽古となり、ゆーきさんのセリフとともに芝居開始。自分の思ったように演じてみる。がーー
「んー、何か違うんだよなぁ」
とヨシエさん。何がダメなのかわからなかった。当然、病人としての立ち振舞いもあるだろうし、双葉をはじめ、他の登場人物に対する関わり方も考えなければならない。
何度も、何度も挑戦してもわからない。
完全に五里霧中。どうすればいいのか見当もつかない。おれは完全に迷走していた。
そんな中、稽古に参加する人数は日に日に増えていった。キャストはもちろんだが、スタッフとして参加するOB、OGや外部からの協力者も稽古を観に来るようになっていた。
台本選定の際に、立野さんの本を外部の団体の人に演出を頼んであると書いたけど、それがその人だ。
その人の名前は『タカシさん』。タカシさんは『劇団トーキング』の代表で、ヒロキさんの関係で数年前から『ブラスト』の芝居のお手伝いに来ているということだった。
稽古には来ていなかったが、『トーキング』の団員も本番は協力者として参加するとのことだった。
そして、もうひとりーーフリーで活動する役者の『ミサオさん』だ。名前だけだと男か女かわからないが、その実ーー
ミサオさんは所謂性同一性障害で身体は女性だが中身は男性とのことだった。
ちなみにミサオさんとタカシさんは古くからの仲で、ミサオさんも『トーキング』には所属してはいないが、トーキングが舞台を打つ度にゲスト出演しているとのことだった。
当然、ヒロキさんとも繋がっており、タカシさん同様、ヒロキさんのつてで協力に来てから現在まで親交があるとのことだった。
どこか飄々としたタカシさんと、一見クールだが話してみると案外オタッキーなミサオさんの登場は、『ブラスト』に賑やかさと同時に緊張感をもたらした。
そして、これまではヨシエさんからだけだったダメ出しも、タカシさん、ミサオさん、ヒロキさんと増え、正直しんどくなり始めた。
途中、出番のない時にミサオさんから指導して貰いもした。が、一瞬はわかった気になっても、いざ稽古に臨んでみると上手くいかない。
「ちゃんと人間を演じて」
こうヨシエさんにダメ出しをされてしまう。
人間を演じるとは何なのだろうか。
そもそも人間とは何なのだろうか。
人間らしさとは何なのだろうか。
自分はただ芝居をしたかっただけなのだ。それがどういうワケか、今はそんな根本的で哲学的なことを考えている。
先の見えない様相の中、おれはベッドに見立てたテーブルの上で、ありもしない虚構の外の景色を眺め続けるのだったーー
とまぁ、今日はこんな感じね。次回は、立ち稽古からの一回目の通し稽古かな。まぁ、気ままにやってくわ。
アスタラビスタ。
まぁ、それをいったら、こうやって文章を考えるのも疲れるといえば疲れるのだけど、同時に楽しみでもあるのはいうまでもなく。
そもそも人間には基礎代謝というものがあって、何もせずとも生きているだけでエネルギーを消費するのだから、ものを考えるという行為だけでもそれなりに疲労を感じるのは当たり前なのだ。
ただ、ものを考えるのも楽しいんよな。だから止められない。だからこそ、こうやって文章を書き続けてしまう。そして、それはどの分野でも同じだと思うのだ。
さて、今日はちゃんと『初舞台篇』の続きを書く。ただ、マンネリにはしたくないんよな。神敬介ネタを止めるか。うーん、悩ましい。
あらすじーー「本役が決まったが、相手役の尚子さんが悩んでいるらしいと聞いた五条氏は、尚子さんにご挨拶のメッセージを送った。尚子さんからの返信に、五条氏は改めて闘志を燃やすのだった」
うーん、普通よね。何つうか、もっとパンチが欲しいんよ。つまらんというかね。まぁ、追々だな。さっさと本編いくわ。ちなみに出てくる人物や団体の名前は全部フェイクなんでよろしく。では、いくーー
さて、役を貰ってひと月もすると、稽古も荒立ち稽古になった。
前にも説明したけど、荒立ち稽古というのは、台本を持ちつつ舞台装置の制約もなしに、とりあえず芝居をやってみるといった感じだ。
この時点でセリフは全部頭に入っていたが、全体の流れを確認するという意味合いも兼ねて、台本を持って芝居をすることとなった。
おれは病人役なので、ベッドに寝ている設定なこともあって、会議室のテーブルをベッドに見立てて芝居をすることとなった。寝返りを打てば即奈落の地獄のベッドなのは気になったが、寝返りをしなければいいだけなので、多少の注意力があれば何の問題もなかった。
机に寝転がりながら出番を待つ。出演場面の稽古となり、ゆーきさんのセリフとともに芝居開始。自分の思ったように演じてみる。がーー
「んー、何か違うんだよなぁ」
とヨシエさん。何がダメなのかわからなかった。当然、病人としての立ち振舞いもあるだろうし、双葉をはじめ、他の登場人物に対する関わり方も考えなければならない。
何度も、何度も挑戦してもわからない。
完全に五里霧中。どうすればいいのか見当もつかない。おれは完全に迷走していた。
そんな中、稽古に参加する人数は日に日に増えていった。キャストはもちろんだが、スタッフとして参加するOB、OGや外部からの協力者も稽古を観に来るようになっていた。
台本選定の際に、立野さんの本を外部の団体の人に演出を頼んであると書いたけど、それがその人だ。
その人の名前は『タカシさん』。タカシさんは『劇団トーキング』の代表で、ヒロキさんの関係で数年前から『ブラスト』の芝居のお手伝いに来ているということだった。
稽古には来ていなかったが、『トーキング』の団員も本番は協力者として参加するとのことだった。
そして、もうひとりーーフリーで活動する役者の『ミサオさん』だ。名前だけだと男か女かわからないが、その実ーー
ミサオさんは所謂性同一性障害で身体は女性だが中身は男性とのことだった。
ちなみにミサオさんとタカシさんは古くからの仲で、ミサオさんも『トーキング』には所属してはいないが、トーキングが舞台を打つ度にゲスト出演しているとのことだった。
当然、ヒロキさんとも繋がっており、タカシさん同様、ヒロキさんのつてで協力に来てから現在まで親交があるとのことだった。
どこか飄々としたタカシさんと、一見クールだが話してみると案外オタッキーなミサオさんの登場は、『ブラスト』に賑やかさと同時に緊張感をもたらした。
そして、これまではヨシエさんからだけだったダメ出しも、タカシさん、ミサオさん、ヒロキさんと増え、正直しんどくなり始めた。
途中、出番のない時にミサオさんから指導して貰いもした。が、一瞬はわかった気になっても、いざ稽古に臨んでみると上手くいかない。
「ちゃんと人間を演じて」
こうヨシエさんにダメ出しをされてしまう。
人間を演じるとは何なのだろうか。
そもそも人間とは何なのだろうか。
人間らしさとは何なのだろうか。
自分はただ芝居をしたかっただけなのだ。それがどういうワケか、今はそんな根本的で哲学的なことを考えている。
先の見えない様相の中、おれはベッドに見立てたテーブルの上で、ありもしない虚構の外の景色を眺め続けるのだったーー
とまぁ、今日はこんな感じね。次回は、立ち稽古からの一回目の通し稽古かな。まぁ、気ままにやってくわ。
アスタラビスタ。