【明日の未来に過去はない】

文字数 3,319文字

 過去を振り返ることはあるだろうか。

 何度目かわからないこの手の立ち上がりではあるけれど、やはり人間、過去を振り返ることというのは往々にしてあることだと思うのだ。

 まぁ、過去なんか振り返ったところで何になるのという風に思う人もいるとは思うのだけど、たまには過去を振り返るのも一種のエンターテイメントとしてはいいものかもしれない。

 というのも、過去は決して変えようがないが、逆にいえば限りなく曖昧なモノだからだ。

 そう、過去は今更どうにも出来やしない。だが、逆にいえば映像や音声として記録に取っていない限りは、その過去は限りなく劣悪にも出来るし、薔薇色にも出来るというワケだ。

 例えていうなら、過去にとてつもない失敗を犯してしまったとする。

 だが、その失敗も今現在の立場を軸に考えていけば、どうにでも改変出来るというか、事実から離れた扱い方が出来るというワケだ。

 まず、その失敗をしたけど、今、こうやっていられるのも、それを経験したお陰だからだ、という話もある。これはポジティブといえば聞こえはいいが、ある種の美化が入っている気がしないでもない。

 が、逆に、あの時こういった失敗をしたせいで、今の自分の人生はくすんでいるんだということも考えようによっては出来てしまうワケだ。これはかなりネガティブな考え方で、下手すれば事実以上に、ことを深刻にしてしまっている可能性だって十二分にあり得る。

 さて、かくいうおれは、この駄文集においてここまで過去のエピソードを何度となく話して来たワケだけど、そのエピソードというのもおれの主観の下で構成されているだけに、事実以上にポジティブなモノもあるだろうし、ネガティブなモノがあっても可笑しくはない。

 そもそも、自分の主観の下に書かれている分、記憶もどこかでねじ曲がっているだろうし、完全なる事実とは大きく異なる部分もたくさん出てくるであろうことはいうまでもない。

 変な話、自分もプライバシーのことや何かも加味してフェイクは多目に入れているつもりだし、そうなるとこの駄文集で書かれている話は、事実とはかけ離れたフィクションとして読むのが正しいのかもしれない。

 そもそも、何故こんな過去の話ばかり書いているのか。理由は正直、特にはない。

 まぁ、いってしまえば、この過去の話すべてが自分にとっては一種のタイムカプセルで、それを書くことでどこか懐かしさに浸っている部分もあるのかもしれない。

 とはいえ、現実がつまらないかといわれると、そうでもなく、別に過去にノスタルジアを感じ、桃源郷的なモノを求めているワケでもなかったりするワケだ。

 そう、おれはただ単に自分の埋めたタイムカプセルを開けるように、この下らない昔話を書いているだけなのだ。

 さて、今日はそんな話ーー

 あれは二十歳になって少し経った頃のことだった。その当時は既に成人式も終わっており、大学の後期試験も終了して、実家に帰っていたのだ。

 とはいえ実家に帰っても、やることといえば、五村西中の友人と飲むか、実家に眠っているレトロゲームをやるぐらいしかなく、例によって、その時もゼルダの伝説を久々に完全クリアしようと躍起になっていたのだ。

 そんな時、キャナからメールが届いた。

 ラインじゃない辺り時代を感じさせるのだけど、それは置いておいて、キャナからのメールを読んでみると、

「久しぶり! 今は五村に帰ってるのかな?
  もし帰ってるんだったら、みんなでタイムカプセルを埋めようって話になってるんだけど、どうかな?」

 とのことだった。おれは面白いと思い、すぐにイエスと回答した。そもそも、おれは小、中学生とかの時の定番でもあるタイムカプセルをやったことがなかったのだ。

 理由?ーー察してくれよ……。

 それはさておき、連絡を返すと少ししてキャナから連絡があった。

「じゃあ、◯日の一時にグッチョンの家集合で大丈夫かな?」

 おれはそれを了承し、その日はガノンドロフ討伐のため、テレビに向かったのだった。

 そして、タイムカプセルを埋める当日。グッチョンの家に行くと、そこにはグッチョンとキャナに加え、麻生、春樹、外山がいた。

 軽く挨拶を交わし、それから何を埋めるかという話になったのだけどーー

 みんな変なモノばかり持ってきていた。

 いや、もうね、変とかいうレベルでもなかった。コンビニのレシートだとか、小銭だとか、割り箸だとか、それを入れてどうすんだよってモンばかりだったからな。

 極めつけは外山だ。何を埋めようとしていたかというとーー、

 コロコロコミックの表紙一枚と起動しなくなったバイオハザードのディスクだからな。

 始めはコロコロコミックを丸々一冊入れようとしていたのだけど、そんなデカイものは入らないだろうということになって、じゃあ表紙だけでもと表紙だけ破って入れることにしたのだ。

 ちなみに、おれはその年に行ったサマソニとラウドパークのチケットと切れたギターの弦だった。人のこといえたモンじゃねぇよな。

 さて、そんな感じでいざタイムカプセルを埋めようとなったのだけど、ここでとんでもない事実に気づいてしまったのだ。というのもーー

 持ってきたモノを入れる容器がない。

 肝心なモノがないんじゃどうしようもねぇだろって話なんだけど、この準備の悪さがまさに五村西中といった感じだよな。

 そんな感じで、みんなで自転車で近場のショッピングモールまで行き、適当な容器を探すことに。途中、将棋板やコスプレグッズを見てはしゃいでいたんでかなり時間を食ったけど、取り敢えずは漬物を作るのに用いるような容器を買い、ことなきを得たワケだ。

 それからグッチョンの家に戻り、いざタイムカプセル。みんな、思い思いに容器に持ち寄ったアイテムを入れていく。外山なんかバイオのディスクが容器に入らないってんで、ディスクを折り曲げてた。ほんと、何でそれを入れようと思ったのか。

 そんな感じでいざ適当な場所に穴を掘り、タイムカプセルを入れ、土を被せて行ったのだ。

「じゃあ、五年後か十年後かに掘り出そうか」

 キャナの提案にみんな異論はなかった。とはいえ、埋めた五分後にはキャナが、

「面倒だからもう掘り出そうか」

 といい出したのには流石にイヤイヤって感じだったけど。賛同してたの春樹だけだったしな。

 さて、そんな感じでおれたちはタイムカプセルを埋め、年齢を重ねたワケだ。

 で、数年前の年末、グッチョンからラインが入ったのだ。その内容はーー

「タイムカプセルを掘り出さないか?」

 というものだった。ちなみに、麻生と春樹はこの時、他県にいて不参加。キャナも大学院の博士課程の卒業のことだったかで不参加とのことになった。外山は色々あって来なかった。

 そんな感じで、おれとグッチョン、グッチョンの奥さんの三人でタイムカプセルを掘り出すことに。いざ、シャベルを持ってグッチョンの家の庭に出たのだが、ここでグッチョンがひとこと、こういったのだーー

「タイムカプセルの場所、覚えてる?」

 覚えてるワケがないよな。

 おれも正直にそういったのだけど、何とグッチョンも覚えておらず、その場で不参加のメンバー全員に連絡を取り、タイムカプセルを埋めた場所を訊いたのだけどーー

 誰も覚えてなかったよな。

 こうなったら仕方ない。手当たり次第に掘り返して行こうとなったのだけどーー

 見つかるワケないよな。

 結局、おれたちのタイムカプセルはゴミ同然のモノを詰め込んだまま、土に返ったとさ。あのカプセル、マジで何処に行ったんだ……。

 その後、おれはグッチョンとグッチョンの奥さん、グッチョンの両親と共に食事を楽しんで帰ったとさ。結局、ちゃんと楽しめたんで結果オーライって感じか。

 ちなみに、外山が不参加の理由は、この食事会が地味に気まずいからで、後にこの食事会を楽しんだ話をしたところ、

「お前のコミュ力はバグっている」

 と驚愕されたのでした。まぁ、グッチョンの奥さんを除けば小学生の頃から顔見知りなんでな。そういう問題でもないかーー

 タイムカプセルを埋めたら、ちゃんと場所の記録は取りましょう。土に返っちゃいますよ。

 アスタラ。
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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