【需要があるけど、需要がない】

文字数 2,109文字

 雨が酷くてたまったモンじゃない。

 まぁ、梅雨ということもあって、毎日のように雨が降るのは仕方がないことなのだけど、こうも続くと流石に気分が滅入る。

 移動するのも傘が必要で手が塞がるし、湿度も高くて身体中に不快な汗がへばりつく。洗濯物は乾かないし、おまけに髪も衣服も濡れてしまい不快なことこの上ない。更には気圧のせいで自律神経も乱れ気味になる。

 確かに梅雨の季節に雨が降らなくなると、水不足が深刻になるのは目に見えているし、そうなれば作物も育たなくなり、食料難になるであろうことも容易に想像がつく。

 学校に行けば、「好きな科目は体育ですッ!」とか恥も外聞もなくいっちゃうような体育脳の人たちが、窓から外を眺めて、指を咥えながら外で体育ができないことを悔やんでいるように、雨が降ることに対して余りいい気はしない人もいるワケだ。

 とはいえ、体育が嫌いなヤツからしたら、雨は絶好の天候で、外で面倒な運動をしなくて済む分、雨を待ち望んでいるヤツも少なくはないのだーーまぁ、校庭でできなくとも体育館があるんで授業自体がなくなることはないんだけどな。それはさておきーー

 まぁ、このご時世ということもあって、なかなかこういうことはいいづらいのだけど、雨が降れば体育祭や運動会も延期になるため、運動嫌いなヤツの中には運動会、体育祭の時期になると、毎日雨が降ることを願うみたいなヤツもいるワケだーー正直、ウイルスのせいで運動会や体育祭が出来なくなってホッとしている運動嫌いのヤツも少なからずいるんだろうな。

 さて、そんな感じで雨は色々な意味で人に需要をもたらしつつも、逆に需要をもたらさない場合があるということだ。

 かくいうおれはというと、いつしか雨というモノが大嫌いになってしまっていたワケだ。

 少なくとも中学の頃はまだ好きだったと思う。理由はやはり、校庭で体育をしなくて済むからに加えて、体育祭が延期になるからだ。それに、あのじめじめした空気が何となく好きだったのもあるしな。

 が、それも大学に入った辺りからだろうか、雨がすごく嫌いになった。理由はわからない。ただ、気づけば雨は煩わしいだけの存在に成り下がっていた。

 そして、今では雨は汗と同レベルの不快な水としてカテゴライズされている。

 でも、考えてみたら、高校の時には既に雨のことが嫌いだったかもしれないという。さて、今日はそんな話だーー

 あれは高校一年の時のことだ。

 その頃はちょうど九月で二学期も始まっていたのだが、その日は文化祭で授業はなく、おれは所属していたバドミントン部の出し物として、朝から外の屋台でたこ焼きを作っては売っていたのだ。

 まぁ、とはいえ、晴れた九月は残暑があってまだまだ暑く、テントの中でたこ焼きをあれよあれよと焼いているのは暑くて仕方がなかった。オマケに男子校ということもあってむさ苦しかったし、色んな意味で暑いだけだった。

 そんな中、文化祭終了一時間前くらいになると、急に雨が降りだしたのだ。

 まぁ、暑くて仕方なかった身としては、雨で少しは熱も引くだろうと思っていたので、本当に幸いだった。事実、暑さも引いたしな。

 さて、そんな感じで残りの一時間、比較的快適な気候の中でたこ焼きを焼いていたのだ。

 そして、リミットが来た。

 終わった。おれは完全にヘトヘトになっていた。そりゃ、朝から夕方までほぼほぼ休まずにたこ焼きを焼き続ければ疲れるのも当たり前。衣服は汗とたこ焼きのネタで汚れていたし、さっさと帰ってシャワーを浴びたい気分だった。

 が、その前に片付けをしなければならないのはいうまでもない。帰るまでが遠足であるように、片付け終えるまでが文化祭だ。おれは同期や先輩と共に使ったテーブルや各種道具を雨に濡れながら部室に運んだ。

 漸くすべてを運び終わった頃には衣服は湿りきっていた。とはいえ、濡れるのはテントから昇降口までの数百メートルで、雨もそれほど強くはなかったので、大して濡れはしなかったけどな。

 さて、すべてを運び込んだら最後はテントだ。これを終えたらすべては終わり。部で話をつけて、クラスでホームルームをやって完全に終わりということになる。それまでの辛抱だ。

 と、おれは同期と共にテントの屋根を下ろそうとしたのだ。そしたらーー

 屋根に溜まっていた雨がおれにブッ掛かったのだ。

 それもおれだけに。

 その量は思った以上に多く、おれは全身ずぶ濡れになってしまった。同期や先輩たちも、やらかしてしまったおれを見て、「やっちゃった……」みたいな感じになっていた。

「マジ、ふざけんなよぉ……」

 思わずそう声を漏らすと、ドッと笑いが起きまして、まぁ、酷いモンだったよな。

 結局、ずぶ濡れになったおれは部室までずぶ濡れのまま帰り、制服に着替えましたとさ。多分、この時にはもう雨が嫌いだったと思う。

 やっぱ、雨って嫌いだわ。さっさと梅雨明けないかねぇ。雨なんか、おれには需要ないッ!

 まぁ、それもおれだけの話で、世間ではそうはならんのだけどね。やっぱ雨も個人単位では需要がなくても、世間では需要があるんよな。

 でも、降り過ぎだけはマジでやめろよな。

 アスタラ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み