【冷たい墓石で鬼は泣く~死拾捌~】

文字数 1,080文字

 結局、謀反を企てた者が首を跳ねられることはなかったということだ。

 詳しい理由はわからなかったが、何でもその後、藤乃助様がその者に色々と話を訊いたところ、その正当性が認められたとのことで、水戸の国、ひいては常陸そのモノからのところ払いをいいつけられ、その場を去ったということだった。

 何故、わたしがそんなことを知っているのかーーそれはわたしが藤乃助様ご本人からそう聴かされたからだった。

 もちろん、藤乃助様の仰っていたことをすべて鵜呑みにすることは出来ないだろう。だが、不思議とこのお方のことは信用出来ると感じた。それはこのお方の人徳がとても素晴らしいモノであったと感じられたからだった。藤乃助様はそこらで良く耳にするような横柄な態度を取る旗本とは全然違っていた。国の百姓たちや町人たちからも親しまれ、いつも笑顔を絶やさない素敵な方だった。

 さて、ここまで語ったからにはもうおわかりかもしれないが、わたしは例の一件以来、藤乃助様に仕えることとなった。といっても、手放しでそうなったワケではなく、ちゃんと腕を試されて、そうなったワケだ。では、その腕試しとは何か。

 ひとつはわたしの手裏剣の腕を試された。

 まず、藤乃助様に仕える従者の中でも指折りの手裏剣使い五人と勝負し、その技術の正確性を確かめるモノだった。その内、わたしは半数を超える三名に勝利すれば、この腕試しに勝利するとのことだった。

 的に使ったのは畳からとても小さな風鈴まで様々だった。だが、そんなのは大した問題ではなく、わたしはすべての的に手裏剣を的中させた。距離と的の大きさは大して関係なかった。その日は特にこれといって風もなく、空気もカラッと乾いていたこともあって、特に問題なく的に当てることが出来た。ほんと、暇な時間を手裏剣遊びに費やしたのは大きかったと思うばかりだった。

 五人の相手全員が、的が小さくなればなるほどに苦戦していたが、わたしはそれを諸ともせず、特に集中することもなく的に当てることが出来た。的に手裏剣を当てる度に藤乃助様の従者の者たちから息が漏れるのを聴いた。結果として勝利したわたしは、次の腕試しへと進むこととなった。

 横目でチラッと藤乃助様を見ると、藤乃助様は興味深そうにわたしのことを見ていた。わたしはそれが何だか気恥ずかしかった。

 ふたつ目の腕試しは学問だった。これは単純に古文書の暗唱や歴史的な事例に対する質疑応答が主だった。これに関しては可もなく不可もない、といった感じだった。

 ふたつの腕試しを終え、最後の三つ目の腕試しとなった。だが、問題はここだったーー

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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