【一年三組の皇帝~伍拾弐~】
文字数 624文字
勝てばすべて良しーーそんなことはまったく思っていなかった。
これはきれいごとでもなんでもない。確かに勝つことだけがすべてだと考えている人はいる。だが、ぼくは今日の『ネイティブ』での勝利を良しとはまったく思えなかった。
辻たちとファミレスで話し合った後、家に帰って夕飯を済ませて部屋で寝転んでいると、ハルナから電話が来た。内容はやはり今日の『ネイティブ』の件だった。
「勝てて良かった」
ハルナはそういった。だが、ぼくはストレートに勝ちの喜びは示せなかった。煮え切らない。そういうモノしか感じ取れない。ハルナは静かに唸るぼくの声を聴いていった。
「どうしたの?」
そして、ぼくはいった。自分の勝ちを良しと思えない、と。あの勝負、恐らくぼくが絶対に勝っていた。そう聴いてハルナはどういうこと?と訊ねて来た。
ぼくはただのカモの一匹に過ぎないーー無意識の内にそう感じていた。関口からしたら、ぼくはちょっとは骨があるかもしれないが、自分の基準からいえば所詮はそこら辺のヤツラとあまり変わりはないのだろう。少なくとも、ぼくからしたらそういう印象だった。
「でも、何でそれならシンちゃんを勝たせる必要があるの?」
ハルナはこころからの疑問といった調子で訊ねて来た。......まぁ、これは純粋であればあるほどにわからない疑問だろう。ぼくは簡単に説明した。
「ぼくを逃がさなくさせるためだよ」
尚もハルナはわかっていないようだった。ぼくは静かに息を吐いたーー
【続く】
これはきれいごとでもなんでもない。確かに勝つことだけがすべてだと考えている人はいる。だが、ぼくは今日の『ネイティブ』での勝利を良しとはまったく思えなかった。
辻たちとファミレスで話し合った後、家に帰って夕飯を済ませて部屋で寝転んでいると、ハルナから電話が来た。内容はやはり今日の『ネイティブ』の件だった。
「勝てて良かった」
ハルナはそういった。だが、ぼくはストレートに勝ちの喜びは示せなかった。煮え切らない。そういうモノしか感じ取れない。ハルナは静かに唸るぼくの声を聴いていった。
「どうしたの?」
そして、ぼくはいった。自分の勝ちを良しと思えない、と。あの勝負、恐らくぼくが絶対に勝っていた。そう聴いてハルナはどういうこと?と訊ねて来た。
ぼくはただのカモの一匹に過ぎないーー無意識の内にそう感じていた。関口からしたら、ぼくはちょっとは骨があるかもしれないが、自分の基準からいえば所詮はそこら辺のヤツラとあまり変わりはないのだろう。少なくとも、ぼくからしたらそういう印象だった。
「でも、何でそれならシンちゃんを勝たせる必要があるの?」
ハルナはこころからの疑問といった調子で訊ねて来た。......まぁ、これは純粋であればあるほどにわからない疑問だろう。ぼくは簡単に説明した。
「ぼくを逃がさなくさせるためだよ」
尚もハルナはわかっていないようだった。ぼくは静かに息を吐いたーー
【続く】