【一年三組の皇帝~参拾~】

文字数 1,067文字

 安心半分、緊張半分といったところだった。

 いずみの話はぼくの予想とはまったく異なったモノだった。同時に、なるほどぼくに訊ねて来た理由もわからなくもないといった感じだった。だが、ぼくから何かいえることはないといっても過言ではなかった。

 いずみがいうにはーーいずみのクラスの生活安全委員の女子の様子が可笑しいとのことだった。

 何が可笑しいかといえば、いずみと彼女のクラスの生活安全委員の女子である『宮崎実奈』は小学校の時からの付き合いで、いずみにとっては数少ない友人のひとりだったということだった。当然、中学に入り、同じクラスとなれば元からの友人ということもあって、ふたりは行動を共にすることも多かったのだが、生活安全委員に選ばれてからというモノ、少しずつ宮崎さんの表情は暗くなりがちになり、いずみに対しても何処か素っ気ない態度が目立つようになったという。そして最近では女子、男子ともに彼女のことをあまり良く思っていないらしく、彼女をハブる動きまで出て来てしまっているという。

 ぼくは、なるほどと頷いた。こんなに共感の出来る話はなかった。ぼくも生活安全委員となって、クラスの中でスパイみたいなことをしなければならないーーいい替えれば、それは時にクラスメイトを先生に売らなければならないというような立場になってからというモノ、クラスメイトたちに対してうしろめたさのようなモノは間違いなくあった。

 ほんと、ぼくは運が良かったのかもしれない。自分の支えとなってくれる友人がいて、担任のヤエちゃんもぼくに対して優しく接してくれる。それに和田へのイジメ問題を解決してからというモノ、確実にぼくの扱いが変わったといっても過言ではなかった。

 まぁ、辻たちの立場が悪くなった結果、ぼくの立場がマシになったからそう感じるだけなのかもしれないが。

 ただ、その辻たちのお陰でまた可笑しなことになっているのはいうまでもないが。昨日の敵は今日の友ではないが、辻から共に関口を倒そうと持ち掛けられているのは、いいことか果たして悪いことなのか。

 いずれにせよ、ひとついえるのは、ぼくには宮崎さんを救うだけの余裕はないということだった。

「なるほど。岩浪先輩には何も相談しないのか?」

「出来るワケないだろ」いずみはピシャリといった。「あんな気難しそうな人に」

 それはいえている。とはいえ、先生に相談するよりは、同じ生活安全委員という立場であるんだし、ずっと参考になるだろうし、岩浪先輩のほうが先生よりもずっと動きやすいのはいうまでもなかった。

 ぼくはいったーー

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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