【一年三組の皇帝~伍拾参~】
文字数 747文字
勝つということは決していいことじゃない。
いや、むしろそれは勝っているのではなくて『敗北へのカウントダウン』なのかもしれない。ある一点で勝っていても、通算で負けていれば、それは勝っているとはいえない。
ギャンブルはやらないほうがいいーーそんな話を聴いたことがある。それは一度大きく勝ったとしても、そこに至るまでの間で積もり積もった負け分と合わせると、結局マイナスにしかならないからだという。
自分ではある瞬間は得しているように思えても、全体で見れば大きく損している。そういうことらしい。
「んー、つまりどういうこと?」ハルナはいった。「シンちゃんはあのゲームやるの今日が初めてだよね? だったら全体で見ても勝っているんだからいいんじゃない?」
確かにその通り。ぼくは今日大きく勝っている。だが、だからこそ悪い。というのも、これが完全な運否天賦の元に勝負が決していたら、まだ良かったかもしれないけど、これが仕組まれたことだとしたら最悪だ。
人間は一度感じた旨味を忘れられない生き物だ。そして、それはただの食事だけでなく、勝ちというのもまた同じ。
つまり、今日の勝ち越しが完全に仕組まれたモノだとしたら、これは勝ったのではなくて『勝たされた』モノでしかない。
今まで、あのゲームでドツボにハマった人たちのことを思い出してみればわかる。みな、最初は大勝していた。だが、途中で勝てなくなった。その時点で辞めればいいのに、一度、あるいは数度大きく勝った旨味は忘れることが出来なくなる。オマケにそれが実績になってしまい、おれは何度か大きく勝っているのだから勝てるはず、と錯覚し勝てることを見越して勝負に出てしまう。
だが、それこそがドツボ。
敗者はいつだって勝者の上で楽しそうに踊っているモノだ。
【続く】
いや、むしろそれは勝っているのではなくて『敗北へのカウントダウン』なのかもしれない。ある一点で勝っていても、通算で負けていれば、それは勝っているとはいえない。
ギャンブルはやらないほうがいいーーそんな話を聴いたことがある。それは一度大きく勝ったとしても、そこに至るまでの間で積もり積もった負け分と合わせると、結局マイナスにしかならないからだという。
自分ではある瞬間は得しているように思えても、全体で見れば大きく損している。そういうことらしい。
「んー、つまりどういうこと?」ハルナはいった。「シンちゃんはあのゲームやるの今日が初めてだよね? だったら全体で見ても勝っているんだからいいんじゃない?」
確かにその通り。ぼくは今日大きく勝っている。だが、だからこそ悪い。というのも、これが完全な運否天賦の元に勝負が決していたら、まだ良かったかもしれないけど、これが仕組まれたことだとしたら最悪だ。
人間は一度感じた旨味を忘れられない生き物だ。そして、それはただの食事だけでなく、勝ちというのもまた同じ。
つまり、今日の勝ち越しが完全に仕組まれたモノだとしたら、これは勝ったのではなくて『勝たされた』モノでしかない。
今まで、あのゲームでドツボにハマった人たちのことを思い出してみればわかる。みな、最初は大勝していた。だが、途中で勝てなくなった。その時点で辞めればいいのに、一度、あるいは数度大きく勝った旨味は忘れることが出来なくなる。オマケにそれが実績になってしまい、おれは何度か大きく勝っているのだから勝てるはず、と錯覚し勝てることを見越して勝負に出てしまう。
だが、それこそがドツボ。
敗者はいつだって勝者の上で楽しそうに踊っているモノだ。
【続く】