【帝王霊~玖拾伍~】
文字数 1,062文字
何をひとりで突っ走っているのか。
散々、色んな人にいわれてきたことばだ。それもそうだろう。これまで、生活安全委員としていくつかのトラブルと戦ってきたけれど、ぼくはいつだって自分の力だけで何とかしようとする。別に友達やクラスメイト、先生のことを信用していないワケではないのだけど、ぼくはいつだってひとりで行動しようとしてしまう。
ハルナだってヤキモキしていたはずだ。自分だって生活安全委員なんだと。でも、肝心のぼくは彼女を頼ろうとはしない。それはハルナに何かトラブルが降りかかるくらいなら、自分がそのすべてを被ればいいという考えのせいだ。
でも、それはむしろハルナのことを傷つけてしまった。確かに人から頼りにして貰えることは、それだけでその人に「必要とされている」と思えるし、頼られ過ぎるということでさえなければ、大抵の場合は嬉しいはず。
だが、ぼくは頼られ過ぎるという風に思われることを潜在的に恐れている。コイツ、またかよ。ひとりじゃ何も出来ないのな。そういう風に思われるのが怖くて仕方がない。
自分が無能じゃないなんて思わない。かといって無能だとも思ってはいない。何かは出来るはず。だからこそ、ヤエちゃんはぼくを生活安全委員に推したのだろうから。
いずみのことだってそうだ。アイツのことは信用している。でも、あのケンカ早いいずみが仮に犯人と対面したらーーそう思うと一緒に連れて行くことは出来ない。
それこそ、相手のことを信用していないってことなんじゃないの?
頭の中でふとそういう声が聴こえた気がした。そんなことはない。そう強く否定したかったが、出来なかった。
ぼくがみんなを信用していない?
そして、そんな中でぼくは信用するには難しい関口のいうことはストレートに信用して今走っている。まるで逆だ。ぼくはーー
目的地まで着いた。真っ暗で死んだような場所。昼間は神聖でも、夜は何処よりも邪気が漂っているように思える場所だと思った。
吐き気がした。全力で走ったのが原因のひとつではあるだろうけど、何よりもぼくは緊張していた。身体がセメントのようにガチガチになったようだった。
怖い。怖くて仕方がない。山田先輩から実践的な武術の技術を教わったことがあるとはいえ、ぼくの身体には、そのワザは全然染み付いていない。そしてこの身体の固まりようから考えると、どうなるかーー
いや、考えている暇なんかない。足は震えるし、怖くて仕方ないけれど、ハルナはもっと怖い思いをしているはずだ。
ぼくは深呼吸してゆっくりと足を踏み出した。
【続く】
散々、色んな人にいわれてきたことばだ。それもそうだろう。これまで、生活安全委員としていくつかのトラブルと戦ってきたけれど、ぼくはいつだって自分の力だけで何とかしようとする。別に友達やクラスメイト、先生のことを信用していないワケではないのだけど、ぼくはいつだってひとりで行動しようとしてしまう。
ハルナだってヤキモキしていたはずだ。自分だって生活安全委員なんだと。でも、肝心のぼくは彼女を頼ろうとはしない。それはハルナに何かトラブルが降りかかるくらいなら、自分がそのすべてを被ればいいという考えのせいだ。
でも、それはむしろハルナのことを傷つけてしまった。確かに人から頼りにして貰えることは、それだけでその人に「必要とされている」と思えるし、頼られ過ぎるということでさえなければ、大抵の場合は嬉しいはず。
だが、ぼくは頼られ過ぎるという風に思われることを潜在的に恐れている。コイツ、またかよ。ひとりじゃ何も出来ないのな。そういう風に思われるのが怖くて仕方がない。
自分が無能じゃないなんて思わない。かといって無能だとも思ってはいない。何かは出来るはず。だからこそ、ヤエちゃんはぼくを生活安全委員に推したのだろうから。
いずみのことだってそうだ。アイツのことは信用している。でも、あのケンカ早いいずみが仮に犯人と対面したらーーそう思うと一緒に連れて行くことは出来ない。
それこそ、相手のことを信用していないってことなんじゃないの?
頭の中でふとそういう声が聴こえた気がした。そんなことはない。そう強く否定したかったが、出来なかった。
ぼくがみんなを信用していない?
そして、そんな中でぼくは信用するには難しい関口のいうことはストレートに信用して今走っている。まるで逆だ。ぼくはーー
目的地まで着いた。真っ暗で死んだような場所。昼間は神聖でも、夜は何処よりも邪気が漂っているように思える場所だと思った。
吐き気がした。全力で走ったのが原因のひとつではあるだろうけど、何よりもぼくは緊張していた。身体がセメントのようにガチガチになったようだった。
怖い。怖くて仕方がない。山田先輩から実践的な武術の技術を教わったことがあるとはいえ、ぼくの身体には、そのワザは全然染み付いていない。そしてこの身体の固まりようから考えると、どうなるかーー
いや、考えている暇なんかない。足は震えるし、怖くて仕方ないけれど、ハルナはもっと怖い思いをしているはずだ。
ぼくは深呼吸してゆっくりと足を踏み出した。
【続く】