【ぼくの年末日記~壱~】
文字数 2,250文字
やることが何もないのは幸か不幸か。
その答えは人それぞれだと思う。やることがなくてもひとりで適当に楽しめる人というのもいれば、何かしらの予定を詰めなければ落ち着かないという人もいるだろう。
困ったことにぼくは後者だった。
ひとりっ子だというのに、時間の潰し方もわからないなんて、やはりぼくは器用さとは無縁なのかもしれない。
にしても困ったモノだ。12月27日ーークリスマスも何もなく終わり、あとは年が終わるのを待つだけの何もない日々。冬の休みで学校はないし、部活もーー部活のことはいずれ話さなければならないだろうけど、今回は割愛。
というか、入学時の話はしたけれど、そこからここまでにあったことの話は全然出来ていないので、いずれは話さなければならないのだけど、それはまた次の機会に。
さて、ここで軽く自己紹介をしなければならないだろう。
ぼくの名前は『林崎シンゴ』。現在、中学一年生で、川澄三中に通っている。
ぼくは担任の『長谷川八重』に任命されて『生活安全委員』となったのだけど、この委員がまたとんでもないモノだった。
『生活安全委員』ーー表向きは学校の風紀を守るために服装点検や朝の挨拶活動をしたりするみんなの嫌われ者。だが、裏では学校の風紀を乱すイジメや悪事を事前に食い止めたり、陰で処理するスパイのようなことをしている。
当然、その活動は表になっていないし、知っているのは歴代の『生活安全委員』だけーー本当にそうなのかは別としてーーだったりする。
その活動はいうまでもなくキツイ。そもそもイジメのようなトラブルを処理するのは骨が折れるし、そういった事例がない時は単なる便利屋でしかないため、やることが尽きないのだ。
だからこそ、学校生活は暇じゃない。忙しいことばかり。だけど、いざ休みーーしかも年末でどの家族も大忙しともなると、友達と遊ぶことも出来ずに、やることがなくなってしまってどうにも困ったモノだった。
ぼくは今、自室のベッドでひとりゴロゴロしている。スマホは机の上に置きっぱなし。スマホでも見て時間を潰すのもいいのかもしれないが、あの小さな端末に人の幸せは詰まっていない。いや、むしろ不幸しかないだろう。
SNSに掲示板、動画サイト、人と繋がっているようであっても、その繋がりは非常に薄い。
特にリアルな人間関係の延長であるはずのSNSなんていうのは、殆ど個人の『幸せ自慢』になっており、自分の人生が如何に恵まれているか、楽しい人生を送っているかを競うコンテストのようなモノになってしまっている。
だが、そんなのは本当の幸せでも何でもなく、あるのは空虚な自己顕示欲だけだ。だからこそ、ぼくはSNSなんてやらないし、人と過剰に繋がりたいとも思わない。
とはいえ、年末の暇さには堪えられないという何とも燃費の悪い性格で困ったモノだ。
ゲームでもしたいとは思うけれど、ゲームは母さんの管理下にあって、そこまで長時間は出来ない。読書でもしようかとも思いはしたけれど、ページを捲って数分で気だるさがやって来て読む気分も失せてしまう。
宿題?ーーそれはとっくに終わらせている。あんなモノを後に残して始業式前に慌てるくらいなら、面倒でも先にやってしまって後で楽するほうがずっといいに決まっている。
やることがないーーぼくは大きく息をつき、真っ白な天井をただただ見詰める。
突然、スマホが振動した。
ぼくは寝転がりながらスマホのほうを見る。正直、スマホを取りに行くのもダルくて仕方なかったが、誰から来たメッセージか気になって仕方なしにベッドから立ち上がり、スマホを取りに行くことにする。
スマホを手に取り、メッセージアプリを開きながらベッドに戻る。そこには、いくつかの未読メッセージ。
いくつかはニュースだったり、その手の関係ない話題だ。ひとつは担任の『長谷川八重』ーーもとい『ヤエちゃん』からだ。
ヤエちゃんなんて軽々しい呼び方をするのは、仲がいいからというより、本人がそう呼んで欲しくて、ぼくに強要しているからだ。いい年して未婚なのはそんなーーいや、何でもない。
そして、もう一件のメッセージはーー
春奈からだった。
中山春奈はぼくと同じクラスの『もうひとりの生活安全委員』だ。つまり、ぼくと『共犯』の関係にあるワケだけど、その性質は取るに足らない生徒Aであるぼくとは違って、成績優秀で容姿端麗の人気者の高嶺の花といった感じ。
ぼくは先にヤエちゃんのメッセージを確認した。その内容はーー
『やっほー! 元気かな? シンちゃんはーー』
あまりにどうしようもない内容で、途中で読むのを止めた。ほんと、お節介もいいところだろうし、自分でもセクハラ紛いだとは思うけど、ぼくなんかをからかう時間があるなら、街コンにでも行って恋人を探したほうが絶対にいい。
ヤエちゃんの話に依ると、双子の妹さんも未婚らしいけど、その性格は真逆とのこと。双子の姉妹でありながら、その性格は真逆だが、未婚なのは同じーー何とも皮肉な話だ。
さて、続いて春奈からのメッセージだ。
ぼくは正直かなりドキドキしていた。これまで何度もメッセージを送り合い、電話もしたが、生活安全委員ということを除けば、これといって特殊な関係でもなく、未だに彼女から連絡が来ると胸が高鳴ってしまうのだ。
ぼくは春奈からのメッセージをただただ眺めた。そして、大きく深呼吸をすると、メッセージ一覧から、春奈とのトーク画面をタップしたーー
【続く】
その答えは人それぞれだと思う。やることがなくてもひとりで適当に楽しめる人というのもいれば、何かしらの予定を詰めなければ落ち着かないという人もいるだろう。
困ったことにぼくは後者だった。
ひとりっ子だというのに、時間の潰し方もわからないなんて、やはりぼくは器用さとは無縁なのかもしれない。
にしても困ったモノだ。12月27日ーークリスマスも何もなく終わり、あとは年が終わるのを待つだけの何もない日々。冬の休みで学校はないし、部活もーー部活のことはいずれ話さなければならないだろうけど、今回は割愛。
というか、入学時の話はしたけれど、そこからここまでにあったことの話は全然出来ていないので、いずれは話さなければならないのだけど、それはまた次の機会に。
さて、ここで軽く自己紹介をしなければならないだろう。
ぼくの名前は『林崎シンゴ』。現在、中学一年生で、川澄三中に通っている。
ぼくは担任の『長谷川八重』に任命されて『生活安全委員』となったのだけど、この委員がまたとんでもないモノだった。
『生活安全委員』ーー表向きは学校の風紀を守るために服装点検や朝の挨拶活動をしたりするみんなの嫌われ者。だが、裏では学校の風紀を乱すイジメや悪事を事前に食い止めたり、陰で処理するスパイのようなことをしている。
当然、その活動は表になっていないし、知っているのは歴代の『生活安全委員』だけーー本当にそうなのかは別としてーーだったりする。
その活動はいうまでもなくキツイ。そもそもイジメのようなトラブルを処理するのは骨が折れるし、そういった事例がない時は単なる便利屋でしかないため、やることが尽きないのだ。
だからこそ、学校生活は暇じゃない。忙しいことばかり。だけど、いざ休みーーしかも年末でどの家族も大忙しともなると、友達と遊ぶことも出来ずに、やることがなくなってしまってどうにも困ったモノだった。
ぼくは今、自室のベッドでひとりゴロゴロしている。スマホは机の上に置きっぱなし。スマホでも見て時間を潰すのもいいのかもしれないが、あの小さな端末に人の幸せは詰まっていない。いや、むしろ不幸しかないだろう。
SNSに掲示板、動画サイト、人と繋がっているようであっても、その繋がりは非常に薄い。
特にリアルな人間関係の延長であるはずのSNSなんていうのは、殆ど個人の『幸せ自慢』になっており、自分の人生が如何に恵まれているか、楽しい人生を送っているかを競うコンテストのようなモノになってしまっている。
だが、そんなのは本当の幸せでも何でもなく、あるのは空虚な自己顕示欲だけだ。だからこそ、ぼくはSNSなんてやらないし、人と過剰に繋がりたいとも思わない。
とはいえ、年末の暇さには堪えられないという何とも燃費の悪い性格で困ったモノだ。
ゲームでもしたいとは思うけれど、ゲームは母さんの管理下にあって、そこまで長時間は出来ない。読書でもしようかとも思いはしたけれど、ページを捲って数分で気だるさがやって来て読む気分も失せてしまう。
宿題?ーーそれはとっくに終わらせている。あんなモノを後に残して始業式前に慌てるくらいなら、面倒でも先にやってしまって後で楽するほうがずっといいに決まっている。
やることがないーーぼくは大きく息をつき、真っ白な天井をただただ見詰める。
突然、スマホが振動した。
ぼくは寝転がりながらスマホのほうを見る。正直、スマホを取りに行くのもダルくて仕方なかったが、誰から来たメッセージか気になって仕方なしにベッドから立ち上がり、スマホを取りに行くことにする。
スマホを手に取り、メッセージアプリを開きながらベッドに戻る。そこには、いくつかの未読メッセージ。
いくつかはニュースだったり、その手の関係ない話題だ。ひとつは担任の『長谷川八重』ーーもとい『ヤエちゃん』からだ。
ヤエちゃんなんて軽々しい呼び方をするのは、仲がいいからというより、本人がそう呼んで欲しくて、ぼくに強要しているからだ。いい年して未婚なのはそんなーーいや、何でもない。
そして、もう一件のメッセージはーー
春奈からだった。
中山春奈はぼくと同じクラスの『もうひとりの生活安全委員』だ。つまり、ぼくと『共犯』の関係にあるワケだけど、その性質は取るに足らない生徒Aであるぼくとは違って、成績優秀で容姿端麗の人気者の高嶺の花といった感じ。
ぼくは先にヤエちゃんのメッセージを確認した。その内容はーー
『やっほー! 元気かな? シンちゃんはーー』
あまりにどうしようもない内容で、途中で読むのを止めた。ほんと、お節介もいいところだろうし、自分でもセクハラ紛いだとは思うけど、ぼくなんかをからかう時間があるなら、街コンにでも行って恋人を探したほうが絶対にいい。
ヤエちゃんの話に依ると、双子の妹さんも未婚らしいけど、その性格は真逆とのこと。双子の姉妹でありながら、その性格は真逆だが、未婚なのは同じーー何とも皮肉な話だ。
さて、続いて春奈からのメッセージだ。
ぼくは正直かなりドキドキしていた。これまで何度もメッセージを送り合い、電話もしたが、生活安全委員ということを除けば、これといって特殊な関係でもなく、未だに彼女から連絡が来ると胸が高鳴ってしまうのだ。
ぼくは春奈からのメッセージをただただ眺めた。そして、大きく深呼吸をすると、メッセージ一覧から、春奈とのトーク画面をタップしたーー
【続く】