【帝王霊~捌拾伍~】
文字数 1,253文字
お前には何も出来ないーー何度そういわれて来たかわからない。
おれは出来のいい子供ではなかった。小学、中学、高校とおれは自分の席や体育館の床に座って褒められたり表彰されたりする他人を羨みながら生き続けていた。
そして、その12年間で『山田和雅』の名前が呼ばれることは殆どなかった。
幸い、ちょっとした役職のことで名前を呼ばれることはあったが、おれが周りから羨望の眼差しを受けることは一度としてなかったといって良かった。
おれは負けず嫌いだった。だが、同時に努力も嫌いだった。そもそも何かを出来るようにしたい、なりたいと思っても努力が出来ないのだから、それは勝てるはずがない。更にいえば、何かをやろうとしても要領が悪くて時間が掛かる上にそこまで上に登り詰めることもできなかった。
そして、それを知ったのは大学を卒業する前のことだった。
22歳ーーそんな年まで、おれは自分が如何に無能なのかを知らずに生きて来た。そして、そこから先はパニック障害によって更なる無力感に苛まれることとなった。
おれには何も出来ない。何をやろうにも精神が邪魔をする。何かをやろうとすれば恐れが真っ先に襲ってきて、おれの決定を後回しにさせる。そして、今までの失敗、不能感がおれ自身に何をやっても無理だと告げる。
おれはそのクソみたいな囁きに何度となく抵抗してきた。それもあってか、小さいモノもそれなりのモノも含めて何度となく成功することはあった。だが、本質は何も変わらなかった。おれは腐った精神の奴隷。底辺をいつまでも這いつくばり、いつまでも上に行けないゾンビのような存在。おれは完全に自分自身に敗北していた。
そして肉体がおれの邪魔をする。何かをやるとなった時、おれの身体ーー殊更に肩がガチガチに固まってしまう。武術をやっている身としては、肩の力は徹底して抜かなければならないのに、もはや肩に力が入るのはおれの身体に掛けられた一種の呪いのようなモノだった。オマケに身体は捻れてバランスも悪く、下半身はいくら柔軟をしたところで柔らかくなることはなかった。お陰で何かを体現するということが酷く苦手で、何をやっても器用にこなすことは出来なかった。
おれは自分を呪ったーー呪い続けた。何度呪ったかはわからなかった。いくら対策をしても上手くハマることはない。おれにはもはや何の需要はなかった。
おれには何処にも空いている席などなかった。
だからこそ、これまで群れることはなかった。というより、「群れることが出来なかった」が正しかった。
そう、おれは組織というモノに常駐し、馴染むことが出来ない人間だった。
でも、おれはもうそんな自分がウンザリで仕方がなかった。殺すーーこんな運命にした神を絶対に殺す。ある時からしばしばおれはそう考え続けて来た。神の決めた運命にツバを吐き掛けてやりたかった。
おれは、また負けようとしていた。そして、また無力感に苛まれながらも、必死に抵抗しようとしている自分に気づいていた。
もう、ウンザリだったーー
【続く】
おれは出来のいい子供ではなかった。小学、中学、高校とおれは自分の席や体育館の床に座って褒められたり表彰されたりする他人を羨みながら生き続けていた。
そして、その12年間で『山田和雅』の名前が呼ばれることは殆どなかった。
幸い、ちょっとした役職のことで名前を呼ばれることはあったが、おれが周りから羨望の眼差しを受けることは一度としてなかったといって良かった。
おれは負けず嫌いだった。だが、同時に努力も嫌いだった。そもそも何かを出来るようにしたい、なりたいと思っても努力が出来ないのだから、それは勝てるはずがない。更にいえば、何かをやろうとしても要領が悪くて時間が掛かる上にそこまで上に登り詰めることもできなかった。
そして、それを知ったのは大学を卒業する前のことだった。
22歳ーーそんな年まで、おれは自分が如何に無能なのかを知らずに生きて来た。そして、そこから先はパニック障害によって更なる無力感に苛まれることとなった。
おれには何も出来ない。何をやろうにも精神が邪魔をする。何かをやろうとすれば恐れが真っ先に襲ってきて、おれの決定を後回しにさせる。そして、今までの失敗、不能感がおれ自身に何をやっても無理だと告げる。
おれはそのクソみたいな囁きに何度となく抵抗してきた。それもあってか、小さいモノもそれなりのモノも含めて何度となく成功することはあった。だが、本質は何も変わらなかった。おれは腐った精神の奴隷。底辺をいつまでも這いつくばり、いつまでも上に行けないゾンビのような存在。おれは完全に自分自身に敗北していた。
そして肉体がおれの邪魔をする。何かをやるとなった時、おれの身体ーー殊更に肩がガチガチに固まってしまう。武術をやっている身としては、肩の力は徹底して抜かなければならないのに、もはや肩に力が入るのはおれの身体に掛けられた一種の呪いのようなモノだった。オマケに身体は捻れてバランスも悪く、下半身はいくら柔軟をしたところで柔らかくなることはなかった。お陰で何かを体現するということが酷く苦手で、何をやっても器用にこなすことは出来なかった。
おれは自分を呪ったーー呪い続けた。何度呪ったかはわからなかった。いくら対策をしても上手くハマることはない。おれにはもはや何の需要はなかった。
おれには何処にも空いている席などなかった。
だからこそ、これまで群れることはなかった。というより、「群れることが出来なかった」が正しかった。
そう、おれは組織というモノに常駐し、馴染むことが出来ない人間だった。
でも、おれはもうそんな自分がウンザリで仕方がなかった。殺すーーこんな運命にした神を絶対に殺す。ある時からしばしばおれはそう考え続けて来た。神の決めた運命にツバを吐き掛けてやりたかった。
おれは、また負けようとしていた。そして、また無力感に苛まれながらも、必死に抵抗しようとしている自分に気づいていた。
もう、ウンザリだったーー
【続く】