【藪医者放浪記~死拾参~】
文字数 1,047文字
男の名前はリューといった。
その特徴的な見た目と服装はやはり大和の国のモノではなく、清の国のモノだった。
そもそも、何だって清の人間が川越の街にいたかといえば、これは単純に迷って迷って、荷車の中に隠れて移動していたら、気づけばここにいたということらしかった。
リューは清の国で武術の修行に明け暮れていたが、これまた数奇な運命をたどることとなった。リューは少林寺にて少林拳の修行をしていたのだが、位が上の人間に対して楯突いてしまい破門となってしまった。
それからというモノ、リューは清の国を渡り歩いて適当な種銭を作っては糊口を凌ぐ生活をすることとなった。だが、それも街をうろつくリューマンのケンカを買ってしまい、そのリューマンを半殺しにしてしまったことで、その生活に終わりが来てしまう。
いくら相手がゴロツキのリューマンだとしても、半殺しにしては決まりが悪い。そんなこんなでリューは緑営ーーいうなれば現代の警察の役割をなす軍隊ーーに終われることとなり、かつそのゴロツキがケガさせられてことでリューマンの組織は怒り心頭で、リューはリューマンの集団からも追われることとなった。
そんな中、リューは港にほっぽっといてあった船を盗みひとりで清の国を逃げ出そうと考えたらしい。別に行き先は決まっていなかった。そんなこともあり、大和の国へとやってきたのは完全な偶然だったということだ。
リューはまず越後に流れ着いた。取り敢えず、そこから適当に辺りを探索してみたのだが、そもそもその格好自体が奇異に見えてしまったせいで、やはり同心やおかっぴきに追われることとなってしまった。
だが、やはりリューはその程度ではへこたれなかった。そんなこんなで適当に逃げて逃げて逃げ続けた結果、辿り着いたのが武州川越の国だったということだった。そこでリューはたまたま九十九街道へと迷い込んだ。が、当然銀次たちの一派がそれをよく思うことはなく、リューを排除しようとしたのだが、リューは相手が刀を持っていようと、素手でお構い無しに勝ってしまったし、生き延びてしまった。その結果、銀次に認められて、銀次の用心棒をやることとなったということだった。
「そういうことでしたか」猿田は納得していった。「でも、銀次が老中だなんてとんでもないウソですよ。そもそも老中はもっと厳重な場所にいらしていますし、そもそも周りのガラが悪すぎるモノで」
「なるほど、これはわたくしの勘違いだった、ということだった、か」
リューは落胆するようにいった。
【続く】
その特徴的な見た目と服装はやはり大和の国のモノではなく、清の国のモノだった。
そもそも、何だって清の人間が川越の街にいたかといえば、これは単純に迷って迷って、荷車の中に隠れて移動していたら、気づけばここにいたということらしかった。
リューは清の国で武術の修行に明け暮れていたが、これまた数奇な運命をたどることとなった。リューは少林寺にて少林拳の修行をしていたのだが、位が上の人間に対して楯突いてしまい破門となってしまった。
それからというモノ、リューは清の国を渡り歩いて適当な種銭を作っては糊口を凌ぐ生活をすることとなった。だが、それも街をうろつくリューマンのケンカを買ってしまい、そのリューマンを半殺しにしてしまったことで、その生活に終わりが来てしまう。
いくら相手がゴロツキのリューマンだとしても、半殺しにしては決まりが悪い。そんなこんなでリューは緑営ーーいうなれば現代の警察の役割をなす軍隊ーーに終われることとなり、かつそのゴロツキがケガさせられてことでリューマンの組織は怒り心頭で、リューはリューマンの集団からも追われることとなった。
そんな中、リューは港にほっぽっといてあった船を盗みひとりで清の国を逃げ出そうと考えたらしい。別に行き先は決まっていなかった。そんなこともあり、大和の国へとやってきたのは完全な偶然だったということだ。
リューはまず越後に流れ着いた。取り敢えず、そこから適当に辺りを探索してみたのだが、そもそもその格好自体が奇異に見えてしまったせいで、やはり同心やおかっぴきに追われることとなってしまった。
だが、やはりリューはその程度ではへこたれなかった。そんなこんなで適当に逃げて逃げて逃げ続けた結果、辿り着いたのが武州川越の国だったということだった。そこでリューはたまたま九十九街道へと迷い込んだ。が、当然銀次たちの一派がそれをよく思うことはなく、リューを排除しようとしたのだが、リューは相手が刀を持っていようと、素手でお構い無しに勝ってしまったし、生き延びてしまった。その結果、銀次に認められて、銀次の用心棒をやることとなったということだった。
「そういうことでしたか」猿田は納得していった。「でも、銀次が老中だなんてとんでもないウソですよ。そもそも老中はもっと厳重な場所にいらしていますし、そもそも周りのガラが悪すぎるモノで」
「なるほど、これはわたくしの勘違いだった、ということだった、か」
リューは落胆するようにいった。
【続く】