【魔法使いのネックツイスト】

文字数 2,427文字

 深い傷を負った経験はあるだろうか。

 それは後々まで残る大きな傷のことで、物理的なモノはもちろん、精神的なモノも含んでの話だ。

 まぁ、おれはかつて精神にパニック障害という傷を負い、結果、結構な期間を無駄にすることとなってしまったのだけど、こういった傷というのは一度負うとそれが後の人生にも影響を及ぼすこともあって、どうにも質が悪い。

 おれは経験がないので何ともいえないのだけど、聴くところによれば骨折というのも、一度完治しても後々また不意に古傷が痛みだすということがあるらしい。

 骨折だけじゃない。腰痛のような痛みだってそうだし、考えてみたら傷というのは負わないことが何よりであって、そう考えると、人間が安全に生きていきたいと願うのは当然のことだと思うのだ。

 さて、今日はおれがかつて負った、後々まで影響を及ぼした傷について話していこうと思う。ちなみにパニックの話ではないです。じゃ、やってくーー

 あれは忘れもしない小学校六年生の時だった。その当時のおれといえば、クラスでもダントツ最下位レベルの学力を保有するバカガキ・オブ・バカガキだったワケだ。

 勉強が出来ないのは当たり前、勉強したいと思ったこともなければ、頭が良くなりたいとも思わなかったし、そもそも地頭も脳ミソの代わりにカニミソでも入ってんのかってレベルでゴミだったワケだーーおれ、カニミソ苦手なんよな。それはさておきーー

 まぁ、兎に角頭が悪くて仕方なかった当時のおれだけど、勉強面以外ではどんなガキだったかといえば、アクション映画とK1とゲームとアルセーヌ・ルパンの小説が好きな、頭が悪い割に多少は文化的な人間ではあった。

 特にこの時期といえば、テレビでも土日はもちろん、ウィークデーも木曜と金曜はマストで夜の映画放送があったこともあって映画が大好きで、夜になるとテレビにかじりついて映画を観るような生活を送っていた。

 とはいえ、まだ子供。いくら映画が好きでも、その当時は五村市近辺にはまともに映画館がなく、わざわざ隣街までいかなければならなかったこともあって、自分の足で自由に映画館に行くということが出来なかった。

 オマケに映画館に映画を観に行くには、母親の許可と同伴が必要だったこともあって、おれが興味なくても母親が観たければ観に行く、おれが観たくても母親が興味なかったら絶対に連れて行って貰えないというような感じだった。これから母親になる人、こういうことをすると本当に子供に嫌われるから、気を付けてな。

 で、とあるウィークデーの夜、家族で夕食をとっていると、テレビの画面を眺めていた母親がおれと父にこんなことをいったのだ。

「この映画、観に行きたい!」

 その映画は魔法使いが出てくる有名な小説が原作のモノなのだけど、その当時のおれは魔法の杖よりもベレッタM92こそが正義といわんばかりに魔法使いやファンタジーには興味がなく、というか魔法とか有り得ないし下らないって感じだったーーまぁ、シュワルツェネッガーの映画も中々有り得ないんだけども。

 兎に角、おれはその映画の名前を聴いても何もときめかなかったのだ。それどころか、いい年した大人が魔法がどうとかって話を観たいとかバカ過ぎだろとすら思っていた。

 それ位に子供の頃のおれは魔法とファンタジックな世界観が大嫌いだった。

「そんな映画より、アクション映画が観たい」

 そう母親にいったのだけど、案の定、興味がないという理由で断られました。そんな感じでおれは日曜に家族でそのファンタジー映画を観に行くこととなったのだ。

 とはいえ、この時は本当に行きたくなくて、土曜日にも、家にいるからふたりでどうぞ、といったのだけど、お前も行かなきゃダメだと強制連行が決定ーー改めて考えると何でおれも行かなきゃダメなのかわからないな。

 そんな感じで、日曜の朝になった。快晴、スズメの鳴き声が恨めしい。目が覚め、おれは起き上がろとした。がーー

 ボキッ!

 突然、首がとてつもない音を立て、途端に激痛が走ったのだ。

 正直、首の骨が折れたのかと思った。そして、おれは首の激痛で布団から出れなくなってしまい、もはや映画を観たいかどうかなど考えている余裕などなくなってしまったのだ。

「いつまで寝てんの、早く支度してよ」

 母親がそういって部屋に入ってきたんだけど、首が痛すぎて起き上がれない。そう伝えるも、母親は真面目に取り合ってくれなかった。

 ただ、マジで首が痛く、映画を観るためにシートに座っているのも無理だろうと判断したおれは、何があっても布団から出ようとはせず、ただひたすらに首が痛いと伝え続けた。

「……何だよ!」

 そういって母は部屋を出ていき、結局その日は映画を観に行くことはなくなりました。何だよじゃなくて、こっちは首が回らねぇんだよ。

 とまぁ、その日はそんな感じで終わり、首が痛い以外は普通に生活出来たのですが、痛みは一週間くらい続くわ、翌週に結局その映画を観に行くわで、当時の自分としては最悪でした。

 ちなみに、この首がボキッていったのを切っ掛けにおれの首は、

 ナチュラルに横に四十五度傾いてしまいました。

 お陰で小学校の卒業アルバムの写真は自然体で写ったにも関わらず、首が横に四十五度傾いていて、ぶりっ子みたいで本当に気持ち悪い感じになってしまいました。しかもーー

 この首が傾いた状態は高校卒業前まで続いたからな。

 お陰で中学の卒業アルバムの写真も、マシになったとはいえ、首が三十度ほど傾いていて、ぶりっ子みたいで本当に気持ち悪かった。

 違うんだ!ーーぶりっ子したいんじゃなくて、首が傾いていたんだ!

 結局、高校卒業前に首の傾きは治ったけど、その首の傾きが影響してか、身体全体が今でも歪んだままなんよな。いや、ぶりっ子はしてないよーー顔はアウトローみたいだけど。

 みなさんも自分の首は大切にーーそれと、今ではその映画もファンタジーも大好きです。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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