【コンパスのさすほうへゆけ!】
文字数 2,864文字
最近ネタが凝り固まってしまっている。
そんなの前からだろといわれたら、それまでなのだけど、どうも最近ネタが一定の領域に留まっているというか、発展性がない気がしてならないのだ。
まぁ、こんなゴミみたいな文章で何気負いしてんだって話だけど、何かを続けていると必ずこういった問題にはぶつかるものだ。
そこで悩み、もがくことで新しい景色が見えてくるかもしれない。そんなことはしょっちゅうだろう。というか、人生においてそんな感じの迷いともがきなんていうのは腐るほどある。
例えば、受験勉強なんかがそうだ。
受験勉強に関していえば、早ければ三年以上前から、遅くても一ヶ月前くらいからは始めるものだと思うのだけど、この受験勉強、期間が長くなれば長くなるほど、上手くいかなくなる瞬間が訪れる回数も必然的に多くなる。
かくいうおれも、受験勉強では随分とそういった瞬間があった。
元から頭よくなかっただけだろっていわれたら否定はできないのだけど、これが本当に困ったもので、その時のおれはというと、ひとつの問題に対する解決法は、ただ何も考えずがむしゃらにやることしかなかった。
だが、それではダメなのだ。
何も考えずにただがむしゃらになる。それほど愚かしいことはないと思うのだ。何故かといえば、そこに問題意識がないから。
問題意識のない行動からは、問題解決に必要なアイディアは生まれない。結果、見たくないものを無視し続け、発展性が失われーー
ここはそういう真面目な話をする場ではないな。というワケで下らない話に移っていきまーす。
まぁ、とはいえ受験勉強の辛さってのは、必ずしも逃避できないものではないワケだ。
というのも、人によっては家でマンガを読んだり、ゲームをしたり、本を読んだりと息抜きをする方法などいくらでもあるからだ。
そして、おれにとっての最高の逃避方のひとつが、友人と話をすることだった。そして、同時に誰かに対してイタズラを仕掛けることも。
ま、おれがイタズラばかりしていることはこれまでも散々書いてきたかと思うけど、今回はそこから変な方向に発展してしまった話を書いていこうと思う。
中学三年のこの時期のことだった。また中学時代の話かって感じだけど、やっぱあの時期ほど狂っていた時期はなかったんでね。
やはり、中三のこの時期ともなると受験が迫っているとナーバスになることも多くなり、クラス内もどこか落ち着きがなくなり始めつつあった。
とはいえ、おれは相も変わらず頭の悪いことをやったりいったりしていて、お前に真面目に生きるという選択肢はないのかといわれても反論できないような感じだった。
それこそ、さっきもいったようにおれはイタズラが好きだったもので、以前書いたような小野寺先生の平行四辺形事件みたいなしょうもないイタズラをよくやっていたのだ。
んで、その日も誰かにちょっとしたイタズラを仕掛けてみようかと思ったのだ。
そこでおれのアンテナが察知したのは、教卓の上に置かれた大きなコンパスだった。
このコンパス、数学の授業にて使われるものであり、次の授業が数学ということもあって、数学担当の山川先生が授業に使う道具を一式、置いておいたようだった。
おれは黒板を消す振りをしながら、早速そのコンパスを観察した。
コンパスを使ったことのある人なら当然わかると思うのだけど、コンパスって持ち手のすぐ下にネジがあって、その締まり具合によって脚の開く固さが変わってくるワケだ。
これだと思った。
おれは早速、そのコンパスのネジの部分をしっかりと締め始めた。ネジを手で締めるとか、液体金属かなって話なんだけど、演習用でサイズの大きいコンパスということもあってか、ネジの部分に摘まみがあって、ネジの締め具合は容易に変えられるようになっていたのだ。
おれはそのネジをしっかりと最大まで締めてみたのだ。
まぁ、コンパスの開き具合が変わったくらいでどうなるかといえば、「ちょっと開きづらいな」って違和感を覚えるくらいだと思うのだけど、当時のおれはそんな下らないことですら面白くて仕方なかったのだ。
コンパスに細工はした。あとは授業が始まるまで待つーー
待てなかったんよね。
もうね、早く誰かの反応が見てみたい。その考えでいっぱいなってしまい、そこでーー
麻生を実験台に立ててみることにした。
まぁ、酷い話なのだけど、ここでおれは麻生がどんな反応を見せるかデモンストレートしてみることにしたのだ。
早速、麻生を呼び出し、コンパスを触らせてみる。その際にいったのは、
「このコンパス、何か変なんだよ」
変なのはお前の頭だろって話だけど、おれはとにかく、麻生がどんな反応を見せるか楽しみで仕方なかった。で、麻生がコンパスを手に取り、脚を開こうとすると、
ボキッ!
生々しい音。そうーー
コンパスの脚が折れていたのだ。
これには思わず吹き出しそうになりつつも地味にパニックになってしまい、麻生も「ヤベッ!」とパニくってたんで、早々に自分の教室へ帰るよういうと、麻生は脱兎の如く素早い足取りで教室を後にしたのでした。
それからは気が気でなく、自分の机に着いていても、ことの成り行きがどうなるか気になって仕方がない。そんな中、
山川先生がやってきたのだ。
挨拶をして授業開始。教科書を開いて早速演習開始。早速コンパスを手に取る山川先生ーー
山川先生の手の中で、分離したコンパスが悲しげに鎮座していました。
静寂ーーその虚無的な沈黙と間のせいで、おれは一気に吹き出しそうになってしまいました。かと思いきや、目に涙をいっぱいに溜めた山川先生が、
「誰だ、これやったのぉ!?」
と悲しげにいうのである。おれは必死に笑いを堪え、無関係を装っていた。事件の黒幕はおれで、麻生がコンパスを折ったのも事故的ではあるのだけど、おれはそのことを絶対に口には出さなかった。出してはいけないとーー
「麻生くんがやりました」
……ん!?
甲高い女子の声。おれは麻生を告発した女子のほうを見た。
金田だった。
金田といえば、『体育祭篇』に出てきたギャルで、一軍として、地味にカースト上位に君臨していた女子だが、その金田が麻生のことを告発してしまったのだ。もうね、
「かぁーねだぁーッ!」
「『さん』をつけろよデコスケ野郎ッ!」
「しぃーねぇーッ!」
って感じだった。何でいっちゃうんだよ。
そんな感じで発起人はおれなのに、山川先生の中での絶対悪は麻生ということになり、山川先生は授業中にも関わらず、
となりの教室まで麻生を訪ねにいってしまったのだ。
その後、少しして山川先生は帰ってきて、コンパスなしで授業は始まったのだけど、山川先生、終始泣きそうな顔してたからな。酷い話だわ、おれがな。
その後、塾にて麻生に大丈夫だったか訊ねると、
「あぁ、大丈夫なんじゃん?」
とのこと。実際その後何ともなかったとはいえ、肝が据わり過ぎてるよな。やはり、麻生はどこかズレている。おれもそうなりたいわ。
アスタラビスタ。
そんなの前からだろといわれたら、それまでなのだけど、どうも最近ネタが一定の領域に留まっているというか、発展性がない気がしてならないのだ。
まぁ、こんなゴミみたいな文章で何気負いしてんだって話だけど、何かを続けていると必ずこういった問題にはぶつかるものだ。
そこで悩み、もがくことで新しい景色が見えてくるかもしれない。そんなことはしょっちゅうだろう。というか、人生においてそんな感じの迷いともがきなんていうのは腐るほどある。
例えば、受験勉強なんかがそうだ。
受験勉強に関していえば、早ければ三年以上前から、遅くても一ヶ月前くらいからは始めるものだと思うのだけど、この受験勉強、期間が長くなれば長くなるほど、上手くいかなくなる瞬間が訪れる回数も必然的に多くなる。
かくいうおれも、受験勉強では随分とそういった瞬間があった。
元から頭よくなかっただけだろっていわれたら否定はできないのだけど、これが本当に困ったもので、その時のおれはというと、ひとつの問題に対する解決法は、ただ何も考えずがむしゃらにやることしかなかった。
だが、それではダメなのだ。
何も考えずにただがむしゃらになる。それほど愚かしいことはないと思うのだ。何故かといえば、そこに問題意識がないから。
問題意識のない行動からは、問題解決に必要なアイディアは生まれない。結果、見たくないものを無視し続け、発展性が失われーー
ここはそういう真面目な話をする場ではないな。というワケで下らない話に移っていきまーす。
まぁ、とはいえ受験勉強の辛さってのは、必ずしも逃避できないものではないワケだ。
というのも、人によっては家でマンガを読んだり、ゲームをしたり、本を読んだりと息抜きをする方法などいくらでもあるからだ。
そして、おれにとっての最高の逃避方のひとつが、友人と話をすることだった。そして、同時に誰かに対してイタズラを仕掛けることも。
ま、おれがイタズラばかりしていることはこれまでも散々書いてきたかと思うけど、今回はそこから変な方向に発展してしまった話を書いていこうと思う。
中学三年のこの時期のことだった。また中学時代の話かって感じだけど、やっぱあの時期ほど狂っていた時期はなかったんでね。
やはり、中三のこの時期ともなると受験が迫っているとナーバスになることも多くなり、クラス内もどこか落ち着きがなくなり始めつつあった。
とはいえ、おれは相も変わらず頭の悪いことをやったりいったりしていて、お前に真面目に生きるという選択肢はないのかといわれても反論できないような感じだった。
それこそ、さっきもいったようにおれはイタズラが好きだったもので、以前書いたような小野寺先生の平行四辺形事件みたいなしょうもないイタズラをよくやっていたのだ。
んで、その日も誰かにちょっとしたイタズラを仕掛けてみようかと思ったのだ。
そこでおれのアンテナが察知したのは、教卓の上に置かれた大きなコンパスだった。
このコンパス、数学の授業にて使われるものであり、次の授業が数学ということもあって、数学担当の山川先生が授業に使う道具を一式、置いておいたようだった。
おれは黒板を消す振りをしながら、早速そのコンパスを観察した。
コンパスを使ったことのある人なら当然わかると思うのだけど、コンパスって持ち手のすぐ下にネジがあって、その締まり具合によって脚の開く固さが変わってくるワケだ。
これだと思った。
おれは早速、そのコンパスのネジの部分をしっかりと締め始めた。ネジを手で締めるとか、液体金属かなって話なんだけど、演習用でサイズの大きいコンパスということもあってか、ネジの部分に摘まみがあって、ネジの締め具合は容易に変えられるようになっていたのだ。
おれはそのネジをしっかりと最大まで締めてみたのだ。
まぁ、コンパスの開き具合が変わったくらいでどうなるかといえば、「ちょっと開きづらいな」って違和感を覚えるくらいだと思うのだけど、当時のおれはそんな下らないことですら面白くて仕方なかったのだ。
コンパスに細工はした。あとは授業が始まるまで待つーー
待てなかったんよね。
もうね、早く誰かの反応が見てみたい。その考えでいっぱいなってしまい、そこでーー
麻生を実験台に立ててみることにした。
まぁ、酷い話なのだけど、ここでおれは麻生がどんな反応を見せるかデモンストレートしてみることにしたのだ。
早速、麻生を呼び出し、コンパスを触らせてみる。その際にいったのは、
「このコンパス、何か変なんだよ」
変なのはお前の頭だろって話だけど、おれはとにかく、麻生がどんな反応を見せるか楽しみで仕方なかった。で、麻生がコンパスを手に取り、脚を開こうとすると、
ボキッ!
生々しい音。そうーー
コンパスの脚が折れていたのだ。
これには思わず吹き出しそうになりつつも地味にパニックになってしまい、麻生も「ヤベッ!」とパニくってたんで、早々に自分の教室へ帰るよういうと、麻生は脱兎の如く素早い足取りで教室を後にしたのでした。
それからは気が気でなく、自分の机に着いていても、ことの成り行きがどうなるか気になって仕方がない。そんな中、
山川先生がやってきたのだ。
挨拶をして授業開始。教科書を開いて早速演習開始。早速コンパスを手に取る山川先生ーー
山川先生の手の中で、分離したコンパスが悲しげに鎮座していました。
静寂ーーその虚無的な沈黙と間のせいで、おれは一気に吹き出しそうになってしまいました。かと思いきや、目に涙をいっぱいに溜めた山川先生が、
「誰だ、これやったのぉ!?」
と悲しげにいうのである。おれは必死に笑いを堪え、無関係を装っていた。事件の黒幕はおれで、麻生がコンパスを折ったのも事故的ではあるのだけど、おれはそのことを絶対に口には出さなかった。出してはいけないとーー
「麻生くんがやりました」
……ん!?
甲高い女子の声。おれは麻生を告発した女子のほうを見た。
金田だった。
金田といえば、『体育祭篇』に出てきたギャルで、一軍として、地味にカースト上位に君臨していた女子だが、その金田が麻生のことを告発してしまったのだ。もうね、
「かぁーねだぁーッ!」
「『さん』をつけろよデコスケ野郎ッ!」
「しぃーねぇーッ!」
って感じだった。何でいっちゃうんだよ。
そんな感じで発起人はおれなのに、山川先生の中での絶対悪は麻生ということになり、山川先生は授業中にも関わらず、
となりの教室まで麻生を訪ねにいってしまったのだ。
その後、少しして山川先生は帰ってきて、コンパスなしで授業は始まったのだけど、山川先生、終始泣きそうな顔してたからな。酷い話だわ、おれがな。
その後、塾にて麻生に大丈夫だったか訊ねると、
「あぁ、大丈夫なんじゃん?」
とのこと。実際その後何ともなかったとはいえ、肝が据わり過ぎてるよな。やはり、麻生はどこかズレている。おれもそうなりたいわ。
アスタラビスタ。