【一年三組の皇帝~捌~】

文字数 1,076文字

 一年三組の教室は今日も賑やかだった。

 授業が終わるといくつかの机に人が群がり、その一団は様々な声をあげている。それらは喜びの色もあれば悔しさを滲ませた趣もあった。

 ぼくはそんな様子を遠目から眺めていた。どうにも近づき難い雰囲気があったのだ。

 さて、演劇部に関する話がすっかり長くなってしまったが許して欲しい。まさかぼくとしても突然に演劇部に入ることになるとは思ってもいなかったのでついつい話し込んでしまった。だが、これはほんの序章でしかなかったのだ。問題は演劇部に入部が決まったすぐ後、ヤエちゃんに呼ばれてからのことだった。

 職員室にいたヤエちゃんの表情は何とも神妙なモノとなっていた。まぁ、随分と遅れてしまったこともあって、それも当たり前ではあったかもしれないけど。

 ぼくはヤエちゃんに声を掛けるとすぐさま謝った。何があったのか当然の如く訊かれたので、演劇部と岩浪先輩の話をした。と、神妙な表情だったヤエちゃんの顔に少しばかり光が差したのであった。何でもーー

「そっか、シノブちゃんと、ね!」

 シノブというのは岩浪先輩のことである。「岩浪忍」というのが岩浪先輩のフルネームだ。それはそうと遅れたことを謝ると、ヤエちゃんは、

「ううん。そういうことなら全然いいんだ。其れよりも、最近の教室でのことなんだけどねーー」

 ぼくが遅れた理由など些細なことでしかないとでもいわんばかりに本題へと移った。それはここ最近、ぼくも気になっていたことだった。

「最近、休み時間の教室はどう?」

 ヤエちゃんのその質問は、ぼくに何を答えて欲しいのか、いわなくてもわかっていた。恐らく、何処かでそのことを小耳に挟んだか、誰かから報告を受けたのだろう。だが、敢えてぼくはそれに対して曖昧な返事をすることにした。

「まぁ......、盛り上がってはいるよ」

「そう......」ヤエちゃんの表情は何処を切り取っても真剣だった。「シンちゃんはどうなの?」

 どう、と訊かれてどう答えるべきなのか。だが、ぼくは正直に答えることにした。

「最初の頃はちょくちょくやってた」

「そっか。最初からあんな感じだったの?」

 ぼくは正直に答えた。

「全然。あんな感じになったのはつい最近だよ」

 つい最近といっても、これまでの流れがちょっと急過ぎて何処までが最近で、何処までが前なのか、自分でも判断つかなかった。少なくとも辻たちによる和田のイジメが終わった後からなので、期間でいえば精々三週間といったところか。

 ヤエちゃんはため息をついた。そして、ヤエちゃんは切り出し始めた。

「わかってると思うけどーー」

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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